1. はじめに

 「第78回 応用物理学会 秋季学術講演会」(2017年9月5~8日、福岡)では、合同セッションKで「ワイドギャップ酸化物半導体材料・デバイス」が9月6日に開催された。今回は、その中から、ニコンの講演「スピネル型 ZnGa2O4を用いた高耐久性薄膜トランジスタの開発」の概要を報告する。

2. 開発の背景と目的

2.1 開発の背景

 ニコンは、ロール・ツー・ロール(R2R)対応の直描露光装置を開発し、2016年12月の国際会議「IDW」で発表した。この装置は、ソフトな基材に高精細および高い重ね精度でパターニングができる。R2R用成膜装置とR2R用露光装置を組み合わせてフレキシブルなTFTを生み出し、フレキシブルディスプレー、フレキシブルセンサー、ディスポーザブルセンサーなどの実現を目指している。

 しかし、技術的な課題は山積みである。R2R化による膜質の低下、低温化の制限、複雑な加工プロセス、などが挙げられる。

 IGZO TFTを用いたディスプレーは、中小型のTFT液晶パネルや大型有機ELパネルのバックプレーンとして実用化されている。しかし、バイアスストレス耐性や高すぎる加工性の課題がある(図1)。これらの課題を解決するため、例えば神戸製鋼所では、SiやWをIGZOにドーピングすることで、酸素との結合乖離エネルギーを強めて安定化したスパッタリング用ターゲットを実用化している。

図1 IGZO の特徴と課題
2.2 開発の目的

 組成探索が盛んに行われているInGaZnO4(IGZO)系の中で、アモルファスではなくスピネル型ZnGa2O4という結晶構造の場合でのみ、化学的に極めて高い耐久性を示すことをニコンは見いだした。図2に、スピネル型ZnGa2O4の結晶構造を示す。同図のようにZn(Aサイト)は酸素が4面体構造で包囲、そしてGa(Bサイト)は酸素が8面体構造で包囲する構造である。スピネル型ZnGa2O4の特徴は、(1)酸素欠陥が生じにくい安定な構造、(2)4eV程度のワイドバンドギャップ半導体、(3)積極的な水素ドープでn型化することである。

 今回ニコンは、スピネル型ZnGa2O4が化学的にもデバイス特性でも安定であることを証明し、プロセス選択性が高くセンサーデバイスに使える材料として提案した。

図2 開発の目的

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