2012年4~9月号で連載する「デジタルセル生産のススメ」は、1人完結セル生産で作業者のやる気(モチベーション)を高める仕組みを解説します。2012年10月号からは、徹底的にに科学的な視点を重視して生産性向上を図るVPM(Value Producing Management)を紹介します。

1人完結で幾多の「常識」を超える

 早いもので、2012年4月に開始した本連載も最終回である。今回は、「これからの日本のものづくり」と大上段に構えて、生産現場だけではなくものづくりのプロセス全体に視野を広げつつ、過去5回のコラムをまとめよう。

1人完結へのこだわり

 デジタルセル生産でのこだわりは「1人完結」だ。筆者は、ものづくりの理想の姿は製品の開発から設計、生産、販売、そしてサービスに至るまで、全てのプロセスを1人で完結することだと信じている。産業革命以前の家具職人のイメージである。

 とはいえ、現代において、それを完全に実現するのは難しいことも承知している。そこで、より現実に即して理想に向かってできるだけ多くのプロセスを1人で完結させたい。

 その根拠の1つが、工程内をスイスイと動き回ることから「ミズスマシ」と呼ばれる部品供給要員の配置である。筆者は、このミズスマシに対して否定派だ。例えば100人の組立作業者に対し、5人のミズスマシを配置したとしよう。もし10人から同時に部品供給の依頼が来たらどうなるか。少なくとも5人の作業者は当然しばらく待たされる。いわゆる「手待ちのムダ」の発生だ。逆に、誰からも呼び出しのない時間帯が10分間続いたら、ミズスマシの方が何もせずに待機することになる。やはり、ミズスマシを使って分業することでムダが発生する。

 さらに根本的な疑問もある。一日中、部品の供給を繰り返すミズスマシの仕事を「楽しい」と感じる人はそれほど多くはないのではないか、ということだ。

〔以下、日経ものづくり2012年9月号に掲載〕

関 伸一(せき・しんいち)
関ものづくり研究所 代表
1981年芝浦工業大学工学部機械工学科卒。テイ・エス テックを経て1992年ローランド ディー.ジー.に入社し、品質改善を切り口とした生産改革に注力。2000年に完成させた、ITを取り入れて効率化した1人完結セル生産である「デジタル屋台生産」が日本の製造業で注目される。2008年からはミスミグループの駿河精機本社工場長、生産改革室長として生産現場の改革に従事。2010年3月に「関ものづくり研究所」を設立。

出典:ものづくり塾・製造コース
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