最近、3D映画が増えている。しかも、そこにCGが同化した映像も数多く開発され、登場する人物やロボット、街並みや宇宙空間などが、どこまで本物なのか全く見分けがつかないくらいリアルに描かれているのだから人気なのもうなずける。確か、フルCG映画が登場したのは1995年ごろ、「トイ・ストーリー」だったろうか。実写の世界では不可能な映像の視点があまりに刺激的で、結構ハマってしまったのを覚えている。

 このように、映画の世界もバーチャルとリアルがあったのだが、最近ではその境目がなくなりつつあるようだ。ゲームを見れば分かるが、登場する人物やロボットと、背景などの動きの滑らかさといったら、もう、文句のつけようがないくらいだ。CPUの処理速度が飛躍的に高速化しているといえばそれまでだが、とどまるところを知らない高度化を見るにつけ、いわゆる、Virtual Reality(VR、仮想現実感)やAugmented Reality(AR、拡張現実感)の世界に興味は尽きない。

 ところが、それでも飽き足らない人がいるというのだから、人間という生き物はなんと欲張りなのだろう。ARもVRも、基本的にははたから見ているだけだが、その映像に入っていきたいと考えた会社があるのだから驚いた。いや、驚いたというよりも、そんなことができるのだろうかとビックリしたのである。

 それをMixed Reality(MR、複合現実感)と呼ぶのだそうだが、一体、どんな会社がやっているのかと聞いてみたら、2度ビックリした。もう、14年も前から研究してきたその会社は、キヤノンである。

 言い換えれば、VRの世界にARの世界を張り付け、さらに、その中に入ってしまう世界をつくっているキヤノンは、まさに自らが未来を創造しようとしているのではあるまいか。

〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立、代表取締役に。現在、40数社の顧問、日本知的財産戦略協議会理事長、宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー、日本特許情報機構理事、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。

出典:開発の鉄人、現場をゆく
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