移動通信システムが、変革の時を迎えている。これまでの大型の基地局「マクロセル」から、小型の基地局「スモールセル」に主役が交代するのだ。今後、スモールセルが街の至る所に展開され、ユーザーにストレスを感じさせない移動通信網を構築する道筋が見えてきた。

 スモールセルが主役に躍り出ると考えられる理由は三つある。(1)モバイル・トラフィックの増大、(2)マクロセル向けの周波数拡大の限界、(3)次世代の変調方式の不在、である(図1)。

図1 スモールセルに白羽の矢
モバイル・トラフィックの増大とマクロセル向けの周波数拡大の限界、次世代の変調方式の不在という課題を解決するには、小型の基地局「スモールセル」に頼るほかない。(図:モバイル・トラフィックの推移予測はCisco Systems社のデータ)
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 第1のモバイル・トラフィックの増大は、スマートフォンの登場で状況が一気に変化した。米Cisco Systems社の予測によれば、移動通信のトラフィック量は2012年から2017年の間に13倍にも達するという。年66%の増加率だ。特にデータ量の大きい動画の配信などが、トラフィックの逼迫を引き起こしている。この傾向が2017年以降も続くのは確実だ。

 第2のマクロセル向けの周波数拡大の限界は、3GHz以下の周波数帯域は余裕がないことが最大の要因である。3GHz以下は既に移動通信システムの他、テレビやラジオ、ISMバンドなどのさまざまな用途に割り当てられている。つまり、この帯域には新規に大量に割り当て可能な周波数帯域は見当たらない。そこで、今後は利用できる周波数帯域が比較的残っている3GHz以上の周波数帯域に目を向けることになる。実際、次の移動通信システム用の帯域として各国では3.4G~3.6GHz帯などの新規割り当ての検討が進んでいる。ただし、高い周波数帯ほど距離減衰が大きいため、伝送距離が稼げない。

 第3の次世代の変調方式の不在に関しては、「OFDM(orthogonal frequency division multiplex)」を超える次世代技術の候補が見つからないことが挙げられる。OFDMは、帯域幅当たりの伝送速度の向上と、マルチパス干渉の軽減の両立を狙ったデジタル変調方式。商用サービスが始まった「LTE」や、次世代の移動通信規格「LTE-Advanced」でもOFDMベースの無線アクセス技術を採用している。