iTiDコンサルティング 取締役 コンサルティング最高責任者の北山 厚氏
iTiDコンサルティング 取締役 コンサルティング最高責任者の北山 厚氏
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 日本の製造業は、さまざまな課題を抱えるといわれます。グローバル競争だけでなく、少子高齢化が進む中での人材確保や生産性向上に向けた投資や人材育成など、課題を挙げればキリがありません。その一方、IoTやインダストリー4.0、ロボットといった、今後の事業拡大に大きな影響を及ぼす、新たな流れが現れてきています。抱える課題を解決し、新たな芽を自社で育てていくには、企業体質や開発体制を見直す必要が出てくるでしょう。

 日経テクノロジーオンラインの新コラム「日本の製造業、勝ち続ける鍵」では、製造業の開発力や生産性の向上策に精通するiTiDコンサルティングのコンサルタントに、こうした複雑化する環境の中で日本の製造業が進むべき道を示してもらいます。本コラムの第1回は、iTiDコンサルティングで長年、“悩める製造業が輝きを取り戻す”事例を数多く手掛けてきた取締役 コンサルティング最高責任者の北山 厚氏に、昨今の悩める製造業がどのように社内を変革していくべきかを語ってもらいます。(聞き手は、大久保 聡)

――製造業に属する企業には、グローバル競争の中でドラスティックに変化する市場に対応できるだけの柔軟な姿勢が求められています。そのために、現在の企業内の体制を大きく変革せざるを得ないメーカーは少なくないと思われます。

北山氏 我々は長い間、コンサルティング業務を通じて製造業と関わっています。この経験の中で、うまく変革が進んだ企業だけでなく、なかなか変革できない企業も目にしてきました。こうした差は、変革のマインドをちゃんと持てているかどうかで生まれます。しっかりした変革マインドを持っていれば、企業内の体制変化は進みます。しかし、過去の成功体験に引っ張られたり、しがみついてしまったりする企業は、どうも変わることができないようです。変革のマインドを持てているかが、変革できるか出来ないかの分水嶺になっているといえます。特に最近、その傾向がより顕著になっているといえるでしょう。

 変わることができない企業は昔から変われない体質だったのかといえば、そんなことはありません。第2次世界大戦の終結後に一から事業を立ち上げたような人は変革マインドを持っていたはずです。しかし、高度成長時代に入ると徐々に怪しくなってきます。1980年代ぐらいまでに成功を収めた人たちは、“作れば売れた”時代を謳歌しました。いわば、“作れば売れた”レールに乗ってうまくいっていただけと言えるかもしれません。レールに乗っていたのであり、変革していたのかといえば、そうとは言い切れません。

 その後も、バブル崩壊までの1990年代前半あたりまでは、がむしゃらに目の前のことを頑張っていけば成果に結びついた時代だったと思います。しかし、今はそのやり方はほぼ通用しませんので、この成功体験がこびりついていると、変革マインドはなかなか生まれません。今日、製造業を取り巻く環境は複雑化し、かつグローバルな競争環境下にさらされています。時間をかけて全体を俯瞰して自社が置かれた状況を把握するのも、難しくなっています。そうなると、経営層と中堅層の課題意識にギャップが生じやすくなります。

――どのようなギャップですか。そのギャップが変革マインドにどう悪影響があるのでしょうか。

北山氏 経営層は、それこそ“作れば売れた”時代に仕事で成功を収めた人たちです。一方、中堅層は事業や開発などの現場に属する人たちです。現場が直面する今の時代の課題意識を、経営層がきちんと理解できるといえるかというと怪しいところです。課題意識が高い中堅層が抱くような会社に対する変革マインドに対し、経営層がストッパー役になってしまっている悪いケースは珍しくありません。

 “作れば売れた”時代の成功体験に縛られた人たちが強い力を持っている企業は、やはり変わることは非常に難しい。新しいことに挑戦する案が現場から出てきても、重箱の隅を突いて挑戦的な案をつぶしてしまう。新しいところに挑戦していくのには当然リスクも伴う訳で、重箱の隅を突けば弱いところがあるのは仕方ありません。その弱いところだけに目が行ってしまい、短所を補って余りある長所をきちんと評価できないのです。

 新しいことへの挑戦となると、短期的な収益を求めるのは酷です。短期的な収益を求めることが、新しい芽をつぶしてしまっている。それが変革に結び付かない原因になっている企業は、残念ながら存在します。

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