話題の「光トポグラフィー」にベンチャー企業が参入

2015/03/10 00:00
久保田 博南=ケイ・アンド・ケイジャパン 代表取締役社長(医工連携推進機構 理事)

 うつ病の診断補助などに利用されている「光トポグラフィー」。近赤外線を大脳皮質に照射して酸化ヘモグロビンによる吸光度を指標とした測定方法である。近年、この分野での需要の増加というバックグランドがベースとなり、新しい機器開発・商品化が進行している。

普遍の技術と時代の要求から

 光トポグラフィーは20年ほど前に日立製作所が実用開発したもので、脳機能の可視化を実現した技術である。近赤外線を利用しているために、非侵襲での脳機能のマッピング(イメージグと呼ぶこともある)が可能であり、活動部位を画像化できる。同社では、この技術の有用性が認められ普遍化されたことから、「光トポグラフィ」という登録商標を保持したままその利用を一般公開している珍しい例でもある注)

注)日立製作所の登録商標は「光トポグラフィ」であり、現在一般に使われているのは「光トポグラフィー」となっている。

 約1年前の2014年4月、厚生労働省は光トポグラフィー検査の診療報酬「D236-2 2抑うつ症状の鑑別診断の補助に使用するもの」に対して200~400という点数を与えた。時代の要求に応えた結果と受け止めていいだろう。その点数分が償還される機器が光トポグラフィーによる「脳機能オキシメータ(一般的名称)」だ。

二つのユニークな技術採用が特徴

 このタイミングに呼応するかのごとく、ベンチャー企業のスペクトラテック(代表取締役 大橋三男)が新製品の開発に成功した。同社として最初の医療機器の認証を取得した「光イメージング脳機能測定装置 Spectratech OEG-16ME」である。

16チャンネルの計測点を有するセンサー部の概観
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 本装置は、これまで国内でも数社が販売している同様の機器に比較して、幾つかの特徴を備えている。その中から主要な新技術を紹介すれば、以下の2つである。

 第1は、世界に先駆け、光変調方式に関して「CDMA(符号分割多重)」を採用していることだ。CDMAによる変調方式は“スペクトラム拡散変調”とも呼ばれ、センサーからの信号の対雑音比率を高くでき、機器全体の小型化とともに低価格化の実現などのメリットが大きい。同社はこの技術に関して日本と米国の特許も取得しており、固有の知的財産としても保有している。

 もう一つは、センサーの光検出部の窓の材質としてITO(Indium Tin Oxide)膜を採用したことで、これも世界初の試みである。ITOの利用は、高感度を有しつつ信号対雑音比率の向上とともにセンサーを小型化できるという利点を併せ持つ。

 

小型化が特長の本体部
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タイムリーな商品化を可能にした秘訣

 スペクトラテックでは、これまで研究目的の機関に向けた同種の機器を提供してきた。ところが、ここにきて精神科領域での要求度が急増している抑うつ症状の診断補助という要求に応えられる臨床機器の開発にも乗り出すことを目標に掲げた。

 大橋氏の話によれば、こうした臨床機器への要望が高まってゆく状況を把握し、ベンチャー企業でも医療機器としての認可を取得して、臨床への貢献を目指した企業理念を打ち出すべきだと決断した。前述の特徴、すなわち本体とセンサーの小型化・高性能化は、必ず臨床現場にも役立つという確信を得たからだ。

 実際に医療機器としての認可をとるため、専門コンサルタントや専門機関などからアドバイスを受けながら、製造業、製造販売業の許可を取得。その後、品目認証取得に向けてのステップを踏んだという。この間、約2年半余りで2015年2月に上記機種の認証取得までこぎ着けた。

 いうなれば、新規参入のモデルケースといえそうだが、タイミング的にも今しかないという時期に販売可能となった。もちろん、そのタイムリーな上市は偶然的な要素も含まれてはいるが、それだけではない周到な事業化計画によるところが大きい。たとえ、小規模のベンチャー企業といえども、やり方次第では優れた商品の開発も可能となるのだ。こうした短期間で認証まで行きつけたという事実は、これからの医療機器産業参入を考えている企業にとっても大いに参考となる事例となり得るだろう。