シャープには「緊急プロジェクト制度」という仕組みがある。1年から1年半で戦略商品を開発し、素早く市場投入するための機能横断チームだ。1977年から始まり、通称「緊プロ」とも呼ばれ、メンバーに選ばれると、「緊」のマークが付いた特別な金バッジが社員証に付く。「液晶ビューカム」「ザウルス」「大型ハイビジョン液晶テレビ」「除菌イオン空気清浄機」といったヒット商品も「緊プロ」から生まれた。

 通常、10人から数十人規模でチームが編成される社長直轄の組織だ。事業本部の枠を超えて人材が集められる。様々な技術とアイデアが融合して新商品が生まれていく。「緊プロ」の特徴は、本社経費でプロジェクトの面倒を見る点にもある。日々の仕事に追われ、単年度で成果を出さなければならない事業本部は確実に成果が出ることにしか取り組まない傾向にある。また複数の事業本部にまたがっていれば開発費をどこで負担すべきなのか、責任は誰が取るのかなど社内調整でもめることにもなる。しかも新商品開発には失敗は付きものだ。こうした中ですべて本社が面倒を見ますので、新しいことに素早く挑戦してくださいというのが「緊プロ」の狙いだった。

 この「緊プロ」制度を使ってシャープは上手に液晶を商品に組み込んでいった。ところが、堺工場を建設、液晶を他社にも供給する部品メーカー化して液晶一本足打法になり始めたことに「病魔」が潜んでいた。言ってしまえば、液晶を使う会社が、液晶に使われる会社になってしまった。皮肉なことに液晶がシャープの経営を蝕み始めたのである。

 シャープの大赤字の原因は液晶事業である。白物家電も、健康機器も、コピー機の事業もみな黒字なのにその利益を吐き出すだけではなく、企業としての存亡すら危うくし、「がん細胞化」している。だから筆者はあえて液晶を切り捨てる局面にあると言ったのである。

 シャープは財務面では存亡の危機にあり、復活は不可能と指摘する市場関係者もいる。事実上の銀行管理下に置かれたいま、再生の道のりが厳しいことは事実だ。しかし、液晶以外の工場は元気だ。何とかこの力を生かして再生の道筋は描けないのだろうか。簡潔に言えば、ヒット商品を海外で売りまくるしかないのではないか。液晶ではなく、白物家電やコピー機などシャープが強い製品を基軸にグローバルに市場を拡大させていくしかない。もちろん簡単なことではないが、その可能性はまだ残されている。