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旭化成エレクトロニクス(AKM)のA/Dコンバーター(以下ADC)連載シリーズ第9話目。今回はAKMが開発した新しいADCである『ZDS-NS型ADC』AK925Xシリーズの詳細を解説します。
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A君「ZDS-NS型ADCについてもっと詳しく教えて下さい!」
M課長「ZDS-NSとは”Zero-latency Delta Sigma with Noise Suppression”の略称だ。ZDS-NS型を詳しく知るには、まずΔΣ型ADCについて理解しないとな」
A君「ΔΣって難しいんですよねー。なんとなく高性能、って印象です」

M課長「ΔΣ型の肝はオーバーサンプリングとノイズシェーピングだ」
A君「オーバーサンプリングはイメージつきます。たくさんサンプリングして平均を取ったらノイズは良くなりそうですから。ノイズシェーピングってどういうことですか?」
M課長「オーバーサンプリングとノイズシェーピングはよく混同されるんだが全く別物だぞ。通常、量子化ノイズは全周波数帯に一様分布するが、ΔΣ型ADCでは負帰還と積分器を用いて、量子化ノイズを低周波数帯で少なく高周波数帯で多くなるようにノイズ分布を変化させている。この手法をノイズシェーピングと呼ぶんだな。その結果ディジタルフィルターで量子化ノイズをより多く削減できるようになる」(図1)
A君「えーと……、オーバーサンプリングとノイズシェーピングの合わせ技で、ΔΣ型ADCはノイズ特性や精度の向上を行っている、ってことですね?」

M課長「そうだ。そしてノイズシェーピングこそが、ΔΣ型ADCの応答性を悪くしている原因なのだ。高周波数帯に変調した量子化ノイズを急峻なディジタルフィルターで落とせるからノイズ特性が向上するわけで、逆に言えば、緩いディジタルフィルターだとノイズを落とし切れない。応答性とノイズ特性の間に強いトレードオフが生じるわけだ」
A君「つまり、ΔΣを使うならディジタルフィルターの遅れは、大きくなって当然だと?」
M課長「そうだ。また、ΔΣ型ADCは過去に変換したたくさんのデータを利用することで分解能向上を実現している。これは裏を返せば『前回のデータに影響を受けて特性が変化してしまう』ということだ」
A君「へえー、じゃあアナログのマルチプレクサを使う時とかは注意がいるんですね」
M課長「そうだな、マルチプレクサ後段にΔΣ型ADCを用いるのは、低速なアプリケーションでなければ難しい。図1にまとめたように、即時応答性が必要なアプリケーションにΔΣ型は使えない、というのが一般的だ。残念ながら従来のΔΣ型ADCでは、長所であるオーバーサンプリング特性を活用できないアプリケーションも少なくない」
A君「それは残念」

M課長「ここで原理に立ち返ってみると、オーバーサンプリングには前段のLPFを楽にでき、入力容量も小さくなるというメリットがある。だがノイズシェーピングにはADC自体のノイズ特性を向上させる目的しかない。ユーザーから見れば、オーバーサンプリングにはメリットがあるが、ノイズシェーピングはなくても困らないわけだ」
A君「ほお?」
M課長「そこでAKMが考えたのが、オーバーサンプリングの利点は取り入れつつ、ノイズシェーピングには頼らないで応答性を改善するΔΣ型ADCだ。これこそがZDS-NS型ADCの基本コンセプトなのだよ」
A君「おおっ! なんか開発秘話って感じですね」
M課長「ノイズシェーピングに頼らない前提で演算方法を最適化し、ディジタルフィルター遅延を非常に小さくしたことによって、応答性をSAR型と同等にまで改善した。
また、ZDS-NS型ADCの重要なポイントは、内部データを変換完了ごとにリセットする構成を採用していることだ。これで前回のデータを引きずらないようになった。つまりマルチプレクサ用途でもSAR型と同じように使えるぞ」(図2,3)
A君「それは凄い!」
M課長「ΔΣ型の特長であるオーバーサンプリング特性を持ちつつ、SAR型と同等の即時応答性を両立した新しいADC、それがZDS-NS型ADCだ。『昨日まで世界になかったものを。』を標榜する旭化成らしいADCだな」

A君「そういえば可変ディジタルフィルターも入っているんですよね?」
K先輩「AK925Xシリーズは4段階切替えられるよ。フィルター特性はホームページの”技術情報”に載っているからチェックしてみてね。
もっと詳しく知りたい人向けに『技術セミナー』もあるみたいよ。こちらもチェックしてみたら?」
https://www.akm.com/akm/jp/support/myakm/myakm-lite/events
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次回の配信は10/25の予定です。

図1. ΔΣ型ADCのデメリット
図2.ΔΣ型とZDS-NS型の内部構成図
図3. ZDS-NS型ADCの変換動作