本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 ソニーの犬型ロボット「aibo」については、本誌は内部ソフトウエアやディープラーニング、クラウド基盤の仕組みなどをここ数号で詳細解説してきた(日経Robotics 2018年3月号12018年4月号2。今回は、犬型ロボットという特殊なジャンルの製品において「生き物」らしいユーザー体験(user experience)を実現すべくソニーが施した工夫、そしてそのための技術方策について紹介しよう。

 ソニーのaiboは、本誌が前号までに紹介してきたようにスタンドアローンで動作するロボットではなく、クラウド側との連携を前提としたロボットである。「AWS IoT」や「AWS Lambda」、「Amazon Redshift」といった米Amazon Web Services(AWS)社のクラウドサービスを用い2)、「サーバーレスアーキテクチャー」を全面的に採用。ロボット本体の状態管理やディープラーニングの学習、スマホアプリとの連携といった目的で利用している。

AWSをAIやデータ分析のためのクラウド基盤として全面採用

IDパスワード入力なしで

 クラウドとの連携というと今や当たり前に聞こえるかもしれないが、実はaiboのような民生向けのロボットにおいて、ペットロボットらしいユーザー体験を損なわずに、クラウドとのスムーズな接続を実現することは一筋縄ではいかない。aiboはスマホやPC、テレビといった「コンピュータ的」なデバイスと異なり、キーボードやリモコンなどの入力インタフェースが一切ないからだ注1)。ボタンも電源ボタンが1個あるだけである。

 仮に何らかの入力インタフェースが備わっていたとしても、「愛らしく自律的に動き回るペットのような存在」であることが売りの製品で、クラウド接続のためのIDとパスワードの入力といった煩雑な初期設定をユーザーに強いるのは好ましいことではない。

 「“生き物”であるからには、箱から取り出して電源を入れたら、一切の設定作業なしに動き始め、ユーザーが意識しない内に自動でクラウドに接続するようにしたかった」。ソニーでaiboのクラウド基盤の設計を手掛けた同社 AIロボティクスビジネスグループ SR事業室 クラウドサービス開発室の森本良平氏はそう語る。

この先は日経Robotics購読者限定です。