本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 「船舶業界はこれから自動点検の方向に進むだろう」─。船舶の点検業務を手掛けるテクノス三原 社長の向田尊俊氏はこう語る。

 同社は全長220mもある巨大な貨物船内部の点検にドローンを先駆的に導入した企業。造船業の盛んな広島県に本社を置き、約4年前からドローンに着目してきたが、ついに船内の点検をドローンで実施するめどを付けた。陸上ではインフラ点検などで活用が進むドローンだが、その活躍の場はいよいよ海に浮かぶ船の中にまで広がり始めた形だ。

 船には国内のみを運航する内航船と外国にも行く外航船とがある。今回同社は、外航船の点検をドローンで行った。鉄鉱石や穀物などの原材料を運搬するばら積み船の貨物倉や、原油を運ぶタンカーの内部をドローンで撮影した。これらは橋梁やダムといった屋外の土木インフラ設備に匹敵する巨大な建造物だ。見るべき箇所も多くあるため、船舶内を壁に接近しながら飛行し、腐食やクラックなどがないかを確認した(図1)。

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図1 ばら積み貨物船の内部をドローンが飛行して点検
船舶の検査業務を請け負うテクノス三原は、修繕計画を立てるための調査や定期検査を効率化すべくドローンを導入した。船内の巨大な貨物倉を人が高所作業車に乗って点検せずとも、ドローンによる撮影で高所や構造物の裏側まで短時間で点検できた。(写真左はイメージ、写真右:テクノス三原)

 こうした貨物倉をいくつも持つような大型のばら積み船などの点検は、従来は、人が船内で高所作業車に乗り、高さ30mもの位置にある部材などを目視で点検していた。ドローンを導入したことで、こうした危険な作業が不要となった上、従来、高所作業車からは見にくかった構造物の裏側なども確認することができるなど、点検範囲も広がった。

 本誌は、このテクノス三原の取り組みをドローンの先進的な活用事例として2回にわたって紹介する。今回は前編として、なぜ同社がドローンに着目したかの経緯、船舶検査の仕組み、船特有の構造から来るドローン活用の難しさを解説しよう。

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