「これからどのような会社を目指していくのか」。パナソニックの津賀一宏社長は報道陣の質問に対し、新たな「お役立ち」に向けて絶えずシフトする会社を目指すと強調した。「そうでないと当社は生き残っていけない」。

 津賀社長の発言は2018年5月の決算説明会で出たものだ。同年3月期決算は売上高が前期比9%増の7兆9822億円、営業利益が同37%増の3805億円と、為替の影響を除いた実質ベースで7年ぶりの増収増益を果たした。

 津賀社長は「ここまで大きな企業だと体質を変えて持続させるまでに時間がかかる」と振り返った。従業員数27万人の巨大企業を時代に合わせてシフトさせる難しさをにじませる。

 101年目を迎えるパナソニックは業績回復を弾みに、次の100年に向けた新事業の創出を狙う。最大のカギはIoT(インターネット・オブ・シングズ)だ。家電のIoT対応など消費者向け、小売・流通業向けや電気自動車(EV)・自動運転といった企業向け事業における最新の取り組みを見ていく。

[消費者を攻める]
中核の家電再興へ IoTで事業創造

 パナソニックにとって、家電は現在も売上高の約3割を占める中核事業だ。2018年3月1日、新しい「家電ビジョン」の発表会で同社は家電にIoTを取り込み、101年目以降も家電事業を柱に据える意思を示した。

色あせた、かつての「3種の神器」

 パナソニックはかつてテレビ、洗濯機、冷蔵庫のいわゆる「3種の神器」を普及させてきた家電メーカーの旗手だった。だがかつての輝きはもうない。

 象徴がテレビだ。最大市場の1つである米国では韓国勢などとの価格競争に押されて、事実上撤退を余儀なくされた。主要部品のプラズマパネルを生産していた尼崎工場(兵庫県)は閉鎖し、姫路工場(同)はテレビ用液晶パネルの生産をやめた。数千億円単位の巨費を投じた工場設備の処理は津賀社長時代を通じて経営の重荷になった。

 それでもパナソニックは家電を諦めない。家電事業を担うアプライアンス社社長を務める本間哲郎専務執行役員は「これまでと同じやり方ではダメだ。これが欲しい、と思ってもらうために何が必要かを考え続ける」と話す。具体的には「家電の個別の機能を強化するだけでなく、家庭内外の家電やデバイスをつないで利便性を高め、家電製品に対する憧れを強めていく」と本間氏は説明する。

家電1000台、LPWAでつなぐ

 その手段としてIoTを活用する。第一弾として、家庭用AIアシスタントの「Googleアシスタント」と「LINE Clova」との連携を発表し、対応製品を投入していく方針を示した。ネットに接続した家電製品を音声で簡単に操作できるようにするのが狙いだ。

 ネット接続を促進するために、新しい無線技術であるLPWA(ローパワー・ワイドエリア)を推進していく。NTTドコモと連携し、2018年秋から東京、大阪、滋賀の3地域で計1000台規模のLPWA対応家電を接続する実証実験を始める。

 家庭内ネットでよく使われる無線LAN(Wi-Fi)は初期設定の難しさや電力消費の多さが問題になる。LPWAでこれらを解決する狙いだ。

図 「家電ビジョン」の主な施策1
IoTに打って出る(写真提供(スピーカー):パナソニック、写真(背景):Getty Images)
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