ディスプレー分野で世界最大の学会「SID 2018」(5月20日~25日、米国ロサンゼルス)のシンポジウムで、筆者が興味を持ったシンポジウムの講演を報告するシリーズ。第3回は、英IHSマークイットのチャールズ・アニス氏の講演を取り上げる。アニス氏はフラットパネル・ディスプレー(FPD)の「部材の統合」をテーマとして、“Integration of Key Components into the Panel: Adding Value and Increasing Performance of FPDs”と題して講演した(論文番号50.1)。

 パネルメーカーにとって、部材の統合への取り組みが死活問題であると、経営者や技術者がいかに認識するかで、会社の将来が決まるといっても過言ではない。

 TFT液晶パネル産業は、直材費比率の占める割合が60~70%と大きい。この割合が大きいことは、同時に、参入企業、関係する技術者、研究者が多いことを意味する。例えば、バックライトユニット(BLU)の光源が冷陰極管(CCFL)からLEDに変わったことで、消費電力の削減や液晶パネルの光学特性の向上が大きく進んだ。このように、構成部材が多いことは、液晶パネルの性能向上と原価削減に大きく貢献した。

 しかし、「産業のさらなる発展とパネルメーカーとしての付加価値向上のためには、部材のインセル化が重要である」と、筆者は2004年から学界や産業界に提案し、推進してきた。アニス氏が講演テーマに掲げた「部材の統合」も、筆広い意味で「インセル化」と同じであると筆者は理解している。今回の発表は、アニス氏らしく技術的見地とビジネス的見地の両面から部材統合の現状と展望を示した講演だった。以降に、アニス氏の講演内容を紹介する。

成長なき市場で生き残りに挑む

 FPD市場の収益の長期予測について、図1に示す。FPD市場は、ディスプレーと製造技術において、前例のない変化、アプリケーションの増加、画質の大幅な向上、消費電力の削減、新しい形状の出現を見込んでも、今後の成長は期待できない。このような“成長なき市場”で、パネルメーカーは、生き残りに挑む。ここで鍵を握るのが、部材の統合である。

図1 FPD市場の収益の長期予測
(出所:IHSマークイット)
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 図2に、FPDの応用、部材および仕様について、2000年から2018年に至る18年での変化を示す。2000年のガラス基板による15型TFT液晶パネルは、解像度109ppi、アスペクト比3対4、のSXGA(1280×1024画素)で、すべての部材はディスクリート(個別部品)であった。

 一方、2018年のフレキシブル有機ELパネル(AMOLED)は、解像度570ppi、アスペクト比18.5対9、デュアルカーブエッジで、プラスチック基板上にTFTを形成している。そして、薄膜封止(TFE)を用いたタッチパネル、駆動回路の集積化、指紋センサー付きなど、部材の集積化を実現している。なお、筆者はこのディスプレーは、フレキシブルではないと考えており、「Fixed Display」と呼んでいる。また、解像度の定義はISOで決まっているが、韓国サムスン(Samsung)が公表している上述の数値を間違いだというのが、筆者の認識である。

図2 FPDの応用、部材、仕様の進化
(出所:IHSマークイット)
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