沖縄発で、じわり普及し始めた素材がある。「HPC」と呼ぶ超薄肉コンクリート板だ。プレストレスを導入して厚さ50mm以下のパネルをつくる。穴あけ加工がしやすく、室内の間仕切り、日よけパネルなど用途は広い。今のところ厚さは35mmが限界だが、20mmの実現も視野に入れる。2017年末に完成した技建新本社ビルでは、ビル内外にHPCを多用している。

 コンクリート製品などの工場を背景に、グレーの建物が立つ。那覇市の南東、南城市に2017年11月、完成した技建の新本社ビルだ。南西と北東の2面を細長い縦ルーバーが覆う。説明を聞かないと、ルーバーがコンクリート製であるとは思わないだろう。1枚の長さは8.7mに及び、厚みは最大でも50mmだ。外部側の端部は26~28mmとさらに薄い〔写真1〕。

〔写真1〕線材のような高さ約9mの縦ルーバー
南西側のファサードを見る。縦ルーバーは、4枚で1ユニットを構成する。ユニットのサイズは幅2.5m、高さ8.7mで、下部を2カ所、上部は笠木部分を2カ所固定している(写真:細矢 仁)
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 このルーバーには、「HPC(ハイブリッドプレストレスト・コンクリート」と呼ぶ素材を用いている。HPC沖縄(南城市)が開発し、沖縄県内では、技建が製造を担当している。

 特徴は、炭素繊維ケーブルによる緊張と、コンクリート膨張材による化学的な緊張との相乗効果で厚さ50mm以下のコンクリートパネルを製造すること。超流動の高強度コンクリートを用い、繊維チップなどを混入している。厚さが均一の場合、35mmまで薄くできる。

 技建の大城米男代表取締役社長は、同社が扱うHPCや高強度コンクリートなどをPRできる本社を望んだ。「どこにでもある鉄筋コンクリート造の建物では困る」と、設計者である細矢仁建築設計事務所(東京都世田谷区)の細矢仁代表に伝えた。

 細矢氏は、1階をピロティ形式として駐車場に充て、ルーバーで覆われた2~3階が宙に浮いているような構成を提案した。「執務室は、照明を天井に取り付けないなど、細かい納まりが見えないようにし、間接光で内壁を照らすことで沖縄にはない空間を考えた」と細矢氏〔写真2〕。

〔写真2〕視界を開きつつ日差しを遮断
縦ルーバーのディテール。外部に向かって断面寸法を絞っており、室内側の端部で厚さ50mm、室外側の端部で同26~28mm(写真:細矢 仁)
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執務室からは線材が並んでいるように見える。執務室は間接照明で机上約400ルクスを確保(写真:細矢 仁)
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 高強度コンクリートを用いた柱は480mm角と細い。間仕切りをできるだけ設けず、執務空間が吹き抜けを介して連続したシンプルな構成とし、「製品を見せる場」を演出した。

 一方、南東と北西の2面は沖縄らしさを感じさせる。回廊を囲うルーバーは、沖縄の伝統的な織物であるミンサー織りをモチーフとする〔写真3〕。回廊にも照明は取り付けず、床にLEDを埋め込んだ。夜にはルーバーが象徴的に浮かび上がる〔写真4〕。

〔写真3〕伝統的なミンサー織りを表現
北西の外周を覆うHPCによるルーバーを2階の回廊から見る。沖縄固有のミンサー織りを抽象化した(写真:細矢 仁)
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反対側の南東面も同様で、表面を凹凸に加工したパネルで模様を描く(写真:細矢 仁)
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〔写真4〕アクリルリングで独自の表情
外周のルーバーは回廊の足元に埋め込んだLED照明で照らし出す(写真:細矢 仁)
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内部の間仕切りにもHPCを用いており、エントランス部はアクリルリングを埋め込んで光を透過させる(写真:細矢 仁)
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