ビジネスのデジタル化を進めると、必ずと言っていいほど厄介な存在が出てくる。筆者が国内の著名企業20社の経営層や企画部門、事業部門にインタビューした結果、デジタル化を阻む5つの厄介な存在が浮かび上がった。今回はこのうち「変化を恐れる保守的な社員」を取り上げる。

 経営トップからデジタル化の指示を受け、いざ進めようとすると社内のいくつかの部門や社員が「抵抗勢力」になる場合が少なくない。彼らは常に足を引っ張り、次第にプロジェクトが遅れていく。

 驚くことに、筆者がインタビューした20社全ての企業が、この抵抗勢力の存在に悩まされていた。デジタル化に反対する理由は様々だ。例えばデジタル化によって自分たちの仕事が奪われること。逆にデジタル化によってこれまでよりも仕事が増える場合も抵抗勢力となる。さらには失敗したときの責任を負いたくない、新たなスキルを習得したくないなどの理由もある。日本企業では年齢やポジションが上がるほどチャレンジしたがらない傾向が強い。彼らは変化を恐れる保守的な社員と言っていい。こうした社員が集まる部署は、組織を上げて抵抗勢力となる。金融機関C社で起きたケースを紹介しよう。

自分のいる間は変革したくない

 C社のデジタル化推進部門は、事業部門に対してコールセンターの自動化を進める計画を説明した。この計画は、事前にグループの経営トップから承認を得たものだ。しかし、プロジェクトを開始すると、そのコールセンター部門からの協力を得られず、やがてプロジェクトが行き詰まった。

 具体的にはこうだ。まずコールセンターの部門長が、意思決定を伴う重要な会議に全く出席してくれない。代わりに出席するのは配下のミドルマネジャーだ。権限が委譲されていればそれでもよいが、判断を仰ぐと「私の一存では決められない」の一点張り。一向に議論が進まない。

 後日、部門長に直接話をすると「内容がよく分からない。もっと端的に言ってくれ」という回答。そこで改めて端的に説明すると、今度は「全体がよく見えない。もっときちんと説明してくれ」という反応だった。

 どうやらこの部門長は、計画書に書かれていたAI(人工知能)などを導入してオペレーションやサービスが改善されると、自部門の存在意義が危うくなると考えていたようだ。別会社の幹部から聞いた話によると、この部門長はあと数年で自分が異動することを見越して「せめて自分のいる間はリスクを取って変革したくない」と漏らしていたという。まさに、デジタル化を阻む厄介な存在だ。

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