明治22年(1889年)に鉄道が開通して以降、九州の一大物流拠点であり続けてきた佐賀県鳥栖市。そんな“工場街”にあるのが、パナソニック コネクティッドソリューションズ社(CNS社)の佐賀工場だ。1964年に九州松下電器の工場として開設され、これまでは単3マンガン電池の生産や事務機器の開発生産を担ってきた。

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左写真はJR九州の鳥栖駅の様子。明治29年(1896年)製造のドイツ クルップ(KRUPP)の線路が駅舎を支える。右写真は、パナソニック コネクティッドソリューションズ社(CNS社) 佐賀工場

 佐賀工場は、パナソニックの国内工場としては最も新しい。長さ100m超の全工程が一直線に収まる「ワンフロア一貫生産」を採用する。産業機器向けカメラやハンディーターミナル、決済端末などの業務用機器から、中東地域向けの固定電話機といった民生機器まで幅広い製品を製造しているが、主力は業務用機器だ。

一直線に伸びる生産ライン
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 しかし、単なる生産工場ではない。工場の改善プロセスやIoT化を提案する「IoT化工場のショールーム」でもある。2017年度は103組もの社外見学者を受け入れた。

ほとんどが「おひさしぶり生産」

 業務用機器製造が中心の佐賀工場の特徴は、多品種少量生産であること。例えば決済端末などのシステム関連機器の場合、顧客がシステムを新規に採用すると全店舗導入に向けて大量生産するが、その後は次のシステム刷新まで、新規店舗用などに向けて時折少量を追加生産する程度になる。しかも、この少量生産を繰り返す期間が長い。

 こうしたケースが多いため、佐賀工場では毎月コンスタントに生産する製品はわずか数%で、年間3回以下のみ生産する製品が全体の5割を占める。しかも1ロット当たりの台数は100台以下が70%、10台以下が25%である。おまけに2016年時点で、生産した製品の13%は2007年モデルだったという。佐賀工場では前回の生産から3カ月以上経つ製品を「おひさしぶり生産」と呼ぶが、ほとんどの製品が“おひさしぶり”の少量生産なのだ。

 佐賀工場が独自のIoT化を始めた理由が、まさにここにある。おひさしぶりの少量生産ばかりのため、段取り替えが多いのはもちろん、「チョコ停」(何らかの問題を解決するためにちょっとの時間、生産ラインを停止すること)を連発していては生産が安定する前にその製品の生産が終わってしまい、生産効率が著しく低下してしまう。

 一方で、作っている製品の多くはハンディーターミナルなどの業務用機器、つまり「業務効率を改善するための製品」だ。「顧客の業務効率改善を助けようと製品を作っているのに、振り返れば自分たちはできていなかった」(パナソニック コネクティッドソリューションズ社 モノづくりソリューション担当総括 モノづくりイノベーション推進室 課長の一力知一氏)。

 加えて、人材集めにも苦労している。学生の電機メーカーに対する人気が軒並み落ちているうえに、工場は勤務時間の大半が立ち仕事で「ワーカーになりたい」という人はごくわずかだ。こうした課題を解決するため、工場のIoT化を図らざるを得ない状況だった。

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