創業100周年を迎えたパナソニック。次の100年に向けて、従来のいわゆる“お堅い大企業”の殻を破り、柔軟な開発体制で新規事業の創出を狙う。2017年4月には、新規事業テーマやAI(人工知能)/IoT(インターネット・オブ・シングズ)技術を核とした新たなビジネスモデルの創出と事業化の加速を目指し、テクノロジー&デザイン部門をイノベーション推進役に定め、新たに「ビジネスイノベーション本部」を設けた。2018年4月には中長期戦略の企画・推進機能を強化するべく、全社CTO室を「イノベーション戦略室」に変えるなど、組織改革を断行している。パナソニックはどう変わっていくのか。技術や開発の観点からの変化や挑戦を、CTO(最高技術責任者)などを務める宮部義幸専務執行役員に聞いた(インタビューは2回に分けて掲載)。

(聞き手は日経 xTECH 副編集長 川又 英紀、宇野 麻由子)

宮部 義幸 専務執行役員 CTO、CMO、CQO、CPO、CIO
(撮影:北山 宏一)
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約1年前に大きく組織を変え、今までのパナソニックのものづくりや発想、あるいは縦割りの組織を変えていくという方向性を打ち出しました。この1年でどこまでできましたか。

 従来、「技術部門」とは将来に向けた技術の備えをするところでした。けれど、この10年くらい、単に現在の製品の改良技術を提供するだけでは、どうも成長のエンジンにならないと感じていたんです。テクノロジーを単なる製品の改良技術として使うだけではなく、テクノロジー自体で会社のオペレーションなりビジネスモデルなり、全体を変えていかないと、本当の意味での成長事業や成長領域は生まれてこないと。3~4年前からこうした議論を始め、そのための第一歩を踏み出したのが2017年4月のビジネスイノベーション本部の発足なんです。

 これはなかなか勇気がいることでした。技術部門というのは技術を開発する人しかいないわけですから、技術全体をトランスフォームする、つまり新しいモデルに基づくビジネスを作る組織を立ち上げようとなると機能的に全く足りない。それでもこの1年で、最初に持っていた課題に加えて、走りながら出てきた課題、やってみて分かった本質的な課題がどんどん明確になり、どう解いていけばいいのかも日々明らかになっている。まだいくつかの課題は抱えていますが、相当クリアになってきたという印象です。

CTOは研究所長ではなく、CEO補佐

 CTOというのは会社の中央研究所長ではなく、テクノロジーをメインとしてCEO(最高経営責任者)を補佐する役割であると、私は認識しています。もともとパナソニックの事業領域は多岐に渡っており、CTOが全ての技術を深く知るのは不可能です。むしろ、それぞれの専門家を有機的に交わらせるとか、技術分野と事業分野のミスマッチを解いていく、いわば「クロスバリューイノベーション」が大きな役割でした。でもこれからは、技術でビジネスのやり方そのものを変えていかなければならない。

 よく、意思決定に時間がかかって「大企業はスピードが遅い」と言われますが、毎年新製品を出すといったサイクルでやっている仕事はむしろ、非常に速いんです。それはマーケティングや広報、法務、知財、人事、経理といった職能による分業体制が既に整っていて、自律的に動く仕組みができ上がっているからです。だから大きなことが迅速にできる。

 一方で、今やっていることと少しでも違うことをやろうとすると遅くなる。だから、こうした分業体制まで変えるのがビジネスイノベーション本部の役割であり、それができなければ次に向けた成長はないと考えています。

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