画像診断でも異常が指摘されないような“超早期”のがんを、1滴の血液から発見する――。国立がん研究センター中央病院では2017年夏から、そんな技術の実用化を目指した臨床研究を進めている(関連記事1)。患者から採取した血液で技術を検証し、2020年をめどに人間ドックなどでこの技術が使えるようにすることを目指す。

国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野 主任分野長の落谷孝広氏
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 血液や尿、唾液などの体液からがんを診断・解析する「リキッドバイオプシー」と呼ばれる技術への関心が、ここ数年で急速に高まっている。本命候補の一つと見なされているのが、国立がん研究センターが研究を進めている冒頭の技術であり、「マイクロRNA」と呼ばれる生体内物質に着目した方法だ。日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野 主任分野長の落谷孝広氏が研究プロジェクトを主導している。2018年度はその最終年度に当たる。

 早期発見の対象とするがんは、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫の13種類。がんが分泌するマイクロRNAに着目し、各臓器のがんに特徴的なマイクロRNAをそれぞれ解析することで超早期発見につなげる。研究プロジェクトには東レや東芝など、DNAチップを手掛ける民間企業も参加している。

 このプロジェクトの鍵を握るマイクロRNAとは、いかなる物質なのだろうか。マイクロRNAは20個前後という少数の塩基から成るRNA(リボ核酸)で、人間の体内には2000種類以上が存在する。近年、がんなどさまざまな細胞が分泌し、細胞間の情報伝達などに関わる物質であるエクソソームが、がんの増悪や転移に関わることが明らかになってきた(関連記事2)。そしてその機能を担っているのが、エクソソームが内包するマイクロRNAだ。

 マイクロRNAには、がんの腫瘍サイズが非常に小さいうちから、そのがんの特性を反映するという特徴がある。そのため、がんの超早期発見につながる可能性がある。従来の腫瘍マーカーはがんがある程度進行しないと陽性になりにくく、画像診断も数mm以下のがんは発見困難なことが多い。マイクロRNAは、こうした従来技術の限界を突破できる可能性がある。

 落谷氏らは、各臓器のがんにそれぞれ特徴的なマイクロRNAが複数種存在し、がんの罹患状態によってそれらの血液中の量が変動することに着目。新たな腫瘍マーカーとしてのマイクロRNAの可能性を、国立がん研究センターのバイオバンクに保存された血清検体など約4万3000検体を使って検証した。この結果、「13種類のがんの早期診断に向けたマイクロRNAの候補が出そろった」(落谷氏)ことを受けて、2017年夏に臨床研究に乗りだした形だ。マイクロRNAの候補は、各がんにつき数個程度にまで絞っている。

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