フル電動化の「心臓」となるのがモーターだ。誕生から100年以上が経過した今も進化が続く。けん引役は、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)といった電動車両である。モーター構造の工夫や磁性材料の改善、新しい制御法の導入で高効率化や小型化、コスト削減が急ピッチで進む。電動車両の駆動システムでは、モーターやインバーター、減速機の3つを一体にする「機電一体」により、高効率化と小型・軽量化、コスト削減などをシステム全体で実現する取り組みが活発である。その先には駆動システムを車輪に収める「インホイールモーター」の実現が見えてくる。

 とある自動車技術の展示会で、出展された車載モーターを食い入るように見つめるある技術者。彼の仕事は車載モーターを開発することでもなければ、車載部品を手掛ける部署の所属ですらない。産業機器で利用する、いわゆる産業用モーターの技術者である。そんな「畑違い」の技術者が、なぜ車載モーターに関心を寄せるのか。それは今、モーターの中で、車載品の技術進化が「著しいから」(同技術者)である。

 そのけん引役は、ハイブリッド車や電気自動車といった電動車両を駆動するメインモーターだ。電動車両の増加と共に、同モーターの市場は今後大きく成長すると期待されているだけに、「人・モノ・金」が注がれて、これまでの常識を覆す次世代モーターの研究開発が加速している。

 研究開発の方向性は大きく3つ。「より広い動作領域での高効率化」と「小型・軽量化」、「コスト削減」である(図1)。いずれもさまざまなモーターに共通して求められる項目で、とりわけ電動車両向け駆動モーターへの要求は「厳しい」(複数のモーター技術者)。それだけに、同モーターで培った高効率化や小型化、コスト削減の技術を、他のモビリティーや、家電、産業機器といった他分野のモーターにも「活用できる」(同)。冒頭の技術者が自動車用モーターに関心を寄せる理由がまさにここにある。

図1 モビリティー向けモーターを高効率、小型、低コストに
自動車をはじめとするモビリティー(移動手段)向け駆動モーターでは、より広い動作領域での高効率化や小型・軽量化、コスト削減に向けた次世代品の研究開発が活発である。動作状況に応じて磁束や極数などを変化させたり、磁性材料を変えたりして、これらの目標を達成する。
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 例えば「効率」。市街地や高速道路での走行、混雑具合などの状況に応じて、運転の状態がたびたび変わる。しかも、停止・発進の頻度も多い。駆動モーターでは、こうしたさまざまな環境で、常に高効率で動作するモーターが求められる。その範囲は、他のモーターに比べて「ずっと広い」(複数のモーター技術者)。

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