今回は広義のIoT(インターネット・オブ・シングズ)の視点で住宅での利用を考えたい。現在、電機や建材のメーカーはIoT対応に必死だ。今後登場してくる新製品はほぼ漏れなく、IoT対応になっていくだろう。

 だがIoT家電やIoT建材は本当に必要なのか。今のところ家電や建材をネットにつなげたいのは、家庭のデータを集めたいメーカー側の都合が見えみえで、利用者のメリットは分かりにくい。

住民が求めているのはIoTではなく、便利なサービス

 住民はIoTを求めているわけではない。より便利で、より楽しく、より安全で、そして困ったときにはすぐに手を差し伸べてくれるような斬新なサービスを欲しているだけだ。それにはネット接続が不可欠だというのであれば、IoTは家庭内に確実に広がっていくだろう。

 そもそも、家電や建材は滅多に買い換えるものではない。10年以上使うものがざらにある。そう考えるとIoT家電やIoT建材はかなりの時間をかけて、家庭内にぽつりぽつりと段階的に入っていくと考えるのが自然だ。

 メーカーは家電や建材をIoT対応していくのと並行して、既に家庭内で動いている既存製品に、どうすれば新たな価値やサービスを追加していけるかも同時に考えなければならない。むしろそちらのほうがニーズは高いし、顧客満足度の向上につながりやすい。今使っている製品や付随するサービスに納得できなければ、利用者は次の買い替え時に同じメーカーの製品は二度と買わないかもしれない。

 「モノからコトへ」と言われて久しいが、IoTは実現手段の1つに過ぎない。家電や建材のIoT対応は長期的には不可欠だが、現状の家庭内を見回してみると、すぐに必要かどうかは疑問でもある。

 それに機器そのものがIoTに対応していなくても、既に確実にネットにつながっているものが身近にある。スマートフォンだ。つまり、工夫次第では家電や建材を直接ネットに接続しなくても、スマホとの融合でIoT家電やIoT建材と同等の新たな価値やサービスを提供できなくない。

 一例として、ダイキン工業が2018年1月に提供を始めたルームエアコンの「AI(人工知能)故障診断サービス」を検証してみよう。エアコンに不具合が生じたとき、利用者はスマホを介してAIチャットボットと「会話」をして、的確な回答をもらうというものだ。AIチャットボットからの質問に答えていくと、故障の診断結果が出てくる。修理が必要な場合は「修理目安金額」が表示されて、スマホから即修理を申し込める。

 AIはマイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」のなかに用意されている「Cognitive Services」と「Bot Framework」をベースにしている。エアコン利用者からの質問と回答をデータとして蓄積し、AIが学習。故障診断の回答精度を上げていく。今後ダイキンはエアコンだけでなく、空気清浄機などにも同様のAI故障診断サービスを広げていく計画だ。

ダイキン工業がスマホで提供しているルームエアコンの「AI故障診断サービス」の利用シーン
(出所:ダイキン工業)
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 なお、ダイキンのルームエアコンは別売の無線LAN接続アダプター(Wi-Fi機能)を追加することが可能だ。スマホやタブレットからエアコンの遠隔操作や室内環境の確認などは既にできるが、故障診断といった顧客の不便さの解消に直結するサービスに利用できるものではない。

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