2008年(平成20年)、スルガ銀行が勘定系システムの開発中止の責任を巡り、発注先の日本IBMを提訴。発注者と受注者の責任を契約で明確にする必要性を日本全体が痛感した。

 中国から輸入した冷凍餃子を食べた3家族が中毒症状を訴えた「冷凍餃子中毒事件」がワイドショーを騒がせていた2008年(平成20年)初頭、後のIT業界に大きなインパクトを与える訴訟が提起された。スルガ銀行が3月6日、勘定系システムの開発中止の責任を巡り、発注先の日本IBMに約111億円(後に116億円に増額)の支払いを求める訴訟を起こしたのだ。

 過去にもユーザー企業がITベンダーを訴えた例はあったが、111億円という金額が突出していた。しかも当時のスルガ銀にとって、日本IBMは主要ベンダー。現行の勘定系システムに加え、移動型店舗などを二人三脚で共同開発してきた。「まさか裁判になるほどこじれるとは」と関係者は異口同音に語った。

 これまで国内の受託IT業界は開発案件が赤字でも運用時に回収するなどして帳尻を合わせており、トラブルが訴訟などの形で表に出るケースは少なかった。だがこの頃から、会計処理の厳格化や株主訴訟リスクの増大などにより、開発トラブルがユーザー企業とITベンダーの訴訟合戦に発展しやすくなった。「IT大訴訟時代」の幕開けである。

PM義務や中止提言義務が判例に

 スルガ銀-IBM裁判は、提訴から判決の確定まで7年以上を要した。判決のなかで、裁判所はその後のIT業界に多大な影響をもたらす新ルールを示した。

 第1審となる東京地方裁判所は2012年3月、日本IBMに約74億円の支払いを命じる判決を言い渡した。事実上、スルガ銀の全面勝訴である。判決で日本IBMに賠償を命じる根拠となったのが、日本IBMに「プロジェクトマネジメント(PM)義務の違反があった」との認定だ。

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