向こうから、複数の人が自分のほうへ歩いてきたとしよう。知らず知らずのうちに、あなたはそのなかの1人の異性を集中して見ているかもしれない。それが分かってしまうとしたら……。

 そんな、人の視線の方向をカメラで検知できる技術が実用化された。NECが開発した「遠隔視線推定技術」である。顔認証に定評があるNECはその技術を使って、様々な分野に応用し始めている。視線の遠隔分析もそのうちの1つだ。

NECが開発した「遠隔視線推定技術」。視線の方向を目から出る赤い直線で見える化している。緑色の枠は、人の顔と目の検出部分。今回は手前のノートパソコンに取り付けたカメラで、パソコンの前に座る人の視線を検知している
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 視線の検知は、NECの30年以上にわたる顔認証研究の賜物だ。生体認証のなかでも顔認証は使い勝手がよく、最近はスマートフォンへのログイン時の本人確認にも使われている。米アップルのiPhone Xがそうだ。NECは顔認証システム「NeoFace」で多くの導入事例を持ち、業界をリードしている。NECが現在、対外的に最もアピールしている技術が顔認証と言ってもいいほどの力の入り具合だ。

 視線検知の仕組みはこうだ。まず、カメラ映像のなかから「人の顔の部分」だけを抽出し、さらに「目」を特定する。それが写真の緑色の枠である。

 そのうえで、視線の向きの判定には欠かせない顔の向きや、目頭、目尻、瞳、まゆ毛といった目の周囲の特徴点(位置)を正確にとらえる。さらには目の中の白目と黒目まで見る。こうして、その人が今どの方向を見ているのか、視線を検知するのである。検知した視線の向きは、目から伸びる赤色の直線で表現することで見える化している。これなら視線の向きは一目瞭然だ。

 最近はカメラの画質が向上し、NECはカメラから10m以内の人の視線を検知できるとしている。しかも映像に映る複数の人たちの視線を同時に推定できる。「当社はカメラメーカーではないので、顔認証のアルゴリズムで検知精度を上げつつ、処理を高速化している」(TCI事業部セーフティ事業戦略室の鈴木武志マネージャー)。今後カメラの画質が4K、8Kと上がっていけば、ソフトとの組み合わせでますます検知精度は上がり、カメラからの距離がもっと遠くなっても視線を検知できるようになるだろう。

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