ブロックチェーン技術は多方面に応用可能であり、金融分野だけの技術ではなくなっています。

ブロックチェーン技術の適用分野が広がる
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 具体的にどのようなサービスがあるのか実例を紹介します。また前述したように、様々な用途に適用するためのスマートコントラクト機能で仮想通貨以外の情報や独自処理を追加したブロックチェーン基盤が誕生しています。

ブロックチェーン基盤の応用事例
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 貿易取引は輸送時間を要するため、商品の引き渡しと代金決済でタイムラグが発生します。そうした課題に対して、ブロックチェーン技術によって取引関係者が情報を同時に共有することで、事務手続きの効率化・利便性向上を目指す試みが世界各地で行われています。海外では、シンガポール、オランダ、ドバイ、香港等、日本ではオリックス、オリックス銀行、静岡銀行等が合同で、みずほFG、三井住友銀行、東京海上日動がそれぞれ実証実験の実施や計画を行っています。

 英国のスタートアップ企業Everledger社は、ダイヤモンドやその所有者、付随する保険、鑑定書などの情報をブロックチェーンで管理するサービスを提供しています。主な利用者は、保険会社や鑑定機関です。このサービスを利用すると、ダイヤモンドが盗難にあって市場で販売された場合でも石の特徴などから個体識別ができるので、不正流通の抑止につながります。

 米国のBinded社は、ブロックチェーンに登録された著作物(画像)について、著作権の証明書を発行するサービスを提供しています。Bindedは、ユーザーがアップロードした作品と著作権者の情報をビットコインブロックチェーン上にタイムスタンプ付きで記録して、その時点で作品が存在していたことと権利の帰属を証明します。2017年7月、朝日新聞などの日本企業を含む投資家から95万ドルの資金を調達し、画像の著作権管理のデファクトスタンダードになる可能性が出てきました。

ブロックチェーンはどうなる?

 最後に、ブロックチェーンが今後技術面でどうなっていくのかについて考えてみます。

 ブロックチェーン技術において、コンセンサスアルゴリズムは重要な位置を占めます。ビットコインのPoWは、P2Pネットワーク上で仮想通貨を実運用可能なレベルにまで押し上げました。これは不特定多数の利用者に開放したパーミッションレス型(パブリック型)のような環境では、非常に有効です。

 しかし、今後伸びていくであろうパーミッション型(コンソーシアム型)のように、信頼された者同士で構成されたネットワークにおいて、悪意ある人をどこまで想定する必要があるでしょうか? 想定する必要がなければ、「ビザンチン将軍問題」に備える必要はありません。ビザンチン将軍問題とは、偽情報が混在するネットワーク環境において、正しい合意形成ができるかを問う問題のことです。

 実際、CordaやHyper ledger Fabricの新バージョンであるv1.0においてはビザンチン耐性をあえて排除し、効率性と性能を上げています。

 ブロックチェーンの周辺技術についても、様々な機能が考え出されています。特定の期間であればブロックチェーンに記録せずに取引を実行し、並行実行性と性能を飛躍的に向上させるLightning Network、複数のブロックチェーン基盤を相互接続するInterledger Protocolなどがあります。

 このように、性能向上やシステム連携は、今後のブロックチェーン技術において重要なポイントです。

 ブロックチェーンという言葉自体も揺らいでいます。「ブロックのないブロックチェーン」とは、一見妙な言い回しですが、IrohaやCordaといったブロックチェーン基盤には、ブロックが存在しません。ブロックが必要だった理由は、二重取引をなくすためと、効率性のためでした。しかし、信頼されている者同士で構成されたネットワークでは、必ずしもブロックは必要ではありません。

 ブロックチェーンは仮想通貨から始まり、スマートコントラクトによって様々な領域で採用されはじめています。今後さらなる進化によって大きく変わっていくでしょう。

出典:日経ソフトウエア、2017年9月号 pp.84-85 特集6「文系でもわかるブロックチェーン」を改題し、再構成しました
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。