機器開発を進める上で必要不可欠な熱設計。本連載ではこれまで、熱設計の基礎である伝熱や熱対策を紹介してきた。最終回は、基本的な熱設計手法を解説する。熱設計の具体的な手順を演習の形で説明する。

 熱設計には、正しい進め方がある。単に計算すればいいというものではないし、場当たり的にあれこれ試してもうまくいかない。果たして、熱設計をどのタイミングで行うのがよいだろうか。確実に言えるのは、図面を描く前である。熱は、筐体や基板、部品はもちろん、制御ソフトウエアなどにも関わるからだ。図面を描き始めると分担作業に入るので、後からではトータル設計ができない。従って、最初に熱の通り道を決める必要があるのだ。

 熱設計は、(1)温度上限、(2)使用温度、(3)発熱量、この三つの情報がないと進まない(図1)。

図1 熱設計からサーマル・マネジメントへ
熱設計を進める際、(1)温度上限、(2)使用温度、(3)発熱量の三つの情報を踏まえねばならない。近年、冷却能力が限界に来ており、冷却能力と(1)~(3)を総合的にバランスを取る「サーマル・マネジメント」が重要になってきた。
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 (1)の温度上限は決まっていることが多く、コストに関わってくるところだ。耐熱温度の高い部品はコストも高い。一般向けの部品に比べて、工業用途の部品は少し耐熱温度が高く、自動車用となると耐熱温度もコストもグンと高くなる。

 (2)の使用温度は、仕様に関係してくる。例えば他社製品が45℃まで使えるとうたっているのに自社製品が35℃までであれば、負ける要素になってしまう。逆に、他社製品が40℃までのところ自社製品は50℃まで使えるとなると、差異化要因になる。つまり、これは、商品企画やマーケティングにかなり影響する。

 そして(3)の発熱量は、機器が備えるべき放熱能力に関わる。発熱量が大きいと部品などの温度が上がるので、求められる放熱能力が変わる。同じような部品であっても設計によって発熱量がかなり違うことがあるなど、回路技術に大きく影響されるのが発熱量である。うまく設計することで発熱量を少なくできる。

 これまでは、これら三つの情報をベースに放熱能力を設計するのが「熱設計=サーマル・デザイン」と呼ばれるものだった。そして、これら三つのバランスを取ることが、昔から熱設計で苦しんできたところである。しかし今は、冷却能力の限界から、それが破綻しつつある。「コストが安いからこの部品を使いたい」「この部品の温度上限は75℃だが、どこででも使えるようにするために使用温度は50℃で考えたい」「機能を詰め込んだら発熱量が増えてしまったので、冷却しなくてはならなくなった」といった製品要求を全部聞いていたら、製品が出来上がらない。

 そのため、最近は総合的にバランスを取って、その中で最適な組み合わせを選ぶ「サーマル・マネジメント」が行われるようになってきている。

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