機器開発を進める上で必要不可欠な熱設計。本連載では、熱設計の基礎である伝熱や熱対策、そして基本的な熱設計手法を解説する。今回は、物質移動による熱輸送で熱がどう逃げていくのかを知り、熱伝導と対流、熱放射まで含めた効果的な熱対策を見ていこう。前回はこちら

熱対策1:伝熱面積を大きくする

 伝熱面積を考える際に一番分かりやすいのは、ヒートシンクである。ヒートシンクで空気と物体が触れ合う表面積をどんどん大きくして、熱を逃げやすくしていく。

 場所がなくてヒートシンクを付けられない場合には、熱を拡散していく方法がある。ヒートシンクのように物理的に表面積を大きくするのではなく、等価的な表面積を大きくするのである。熱伝導率が低いと、そこだけ温度が高くなる(図4(a))。空気と物体の間においては温度差に比例して熱が逃げるため、実質的に熱が逃げているのは、図4(a)の矢印の範囲だけになる。他は、物理的に表面積があっても、熱的には関係がない。熱伝導率を上げると、熱分布は平らになっていく。そうすると全体の温度が上がるため、全体から熱が逃げていく、つまり実質的な表面積が増えることになる。このように放熱面積を増やすには固体面の熱伝導率を上げて実効表面積を増やしていく。

図4 伝熱面積を大きくする
熱伝導を促進すると温度が均一化し、「実効放熱面積」が大きくなる(a)。このため熱源の温度は低下する。風速を上げるとさらに温度は下がるが、実効放熱面積は減少する。(b)は、円盤の真ん中に発熱体を置き、円盤の直径を広げていったときの熱源の温度上昇をグラフ化したもの。
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 熱伝導率を上げると面全体が均一な温度になるが、ファンなどで風を吹き付ける強制対流では自然対流に比べると温度差を生じやすい。表面から熱が逃げやすく、熱源から遠い部分が冷えてしまうためである。それを定量的に表したのが、図4(b)である。円盤の真ん中に発熱体を置き、円盤の直径を広げていったときの熱源の温度上昇をグラフ化した。円盤の熱伝導率は2種類、周りの冷却の条件は3種類(自然空冷、風速1m/s、風速3m/s)である。例えば、円盤が鉄板のような熱伝導率が低い素材では、直径を大きくしてもあまり冷えない。しかし、熱伝導率が高い銅板では直径を大きくしていくと、熱源の温度はどんどん下がる。

 面白いのは、強制空冷と自然空冷の違いである。直径50mmぐらいの小さい円盤では、強制空冷と自然空冷の差は非常に大きい。小さい円盤では熱源から端までの距離が短いため、風速が速くても端まで熱が届く。つまり風速の差(熱伝達率の差)が温度に直接反映される。しかし直径を大きくした円盤では、強制空冷だと途中で冷えてしまうため熱が端まで届かず実質的な放熱面積が減ってしまう。このため思ったほど温度が下がらない。一方、自然対流は熱が逃げにくく伝導で遠くまで伝わるため、温度が下がってくる。つまり、直径が大きい場合は、風速1m/sと3m/sの差がなくなってくるのである。

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