学校教育の現場にはさまざまなリスクが存在する。それらの中でも注目されているのが「著作権」と「情報セキュリティ」だ。前者は2018年5月に改正著作権法が成立し、授業利用などでの著作権の権利制限を規定した35条などが変わったため、ICTを活用した授業などに影響がある。後者については、大学が大規模な個人情報漏洩を起こすなどの事故が後を絶たたず、セキュリティ対策が急務だ。

 2018年6月7~9日に東京・有明で開催された教育関連の総合イベント「New Education Expo 2018」では、「教育現場の2大リスク 『セキュリティ』『著作権』に備える」と題したセミナーに多くの聴講者が集まった。まず、著作権法の改正について、山口大学国際総合科学部教授で知的財産センターの副センター長でもある木村友久氏が、学校関係者向けにポイントを解説した。

山口大学 国際総合科学部教授の木村友久氏は2018年6月7日に開催されたセミナーで著作権法改正が教育現場に及ぼす影響を解説した
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 著作権法第35条の権利制限規定により、学校の授業では無許可の複製が可能な一方で、他者の著作物を利用して作成した教材や映像などをサーバーに蓄積して随時配信する「異時公衆送信」は認められていない。異時公衆送信は著作権法違反になるが、LMS(学習管理システム)での教材配信、eラーニングや授業の映像配信などが急速に普及する中で、法律と実態が合わなくなっている。

 木村教授によると、今回の法改正では「一定の異時公衆送信」が認められ、補償金を徴収分配する団体に学校が補償金を支払うことで、著作物を許諾なしで利用できるようになった。今後、このための権利処理環境の整備や啓蒙がされていくはずだ。

著作権法第35条の改正により「一定の異時公衆送信」が認められるが、利用する教育機関は補償金の支払いが必要になる
(出所:木村氏の発表スライド)
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 木村教授は、「ある種のグレーゾーンとして存在していた領域が白黒はっきりしたことにより、これまで異時公衆送信を前提として作成してきた教材は、見直しをしないと著作権法上のリスクなる」と注意を喚起した。学校は補償金制度に従って新たなコストを負担することも考えられるし、異時公衆送信はせずに補償金も支払わないという選択もできる。

 だが木村教授は、「海外に豊富にある良質な教材も使えることになるので、補償金が適切な額なら制度を利用した方が楽だろう」と指摘した。それと同時に、「大学は著作権の宝庫でもある。著作権法改正を機に大学が持っているコンテンツを見直し、活用する方法を考えてはどうか」と提案した。

木村教授は著作権法改正への対応と、大学が著作権を持つ著作物の活用を呼び掛けた
(出所:木村氏の発表スライド)
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