楽天で学んだ、数字を読む力と実践の大切さ

シバタ:伊藤さんは、そういった視点や適切なKPIツリー(重要目標達成指標「KGI」を達成するためのロジックツリー)の作り方など、どこでどう勉強されたのですか?

伊藤:楽天に勤めていた時ですね。楽天市場がスタートした当初は、(市場に出店するための)月5万円の出店料しか収入源がなかったので、最初は出店店舗数を増やすことにフォーカスして目標を立てていました。

 それが後から広告掲載料や売上手数料もいただくようになって。この変化の過程とKPIの進捗について、(当時)毎週行われていた全体朝会ですごく細かく発表されていたので、あの機会にいろんなことを学びました。

 楽天で三木谷さん(三木谷浩会長兼社長)がやっていたKPIの立て方は今でも参考にしています。今でこそ、ユニットエコノミクスと呼ばれる「ユーザー1人当たりの平均の経済性」やLTV(ライフ・タイム・バリュー)などを見て事業判断を下すのが当たり前になっていますが、楽天では2000年以前からそれをやっていたんですよね。

シバタ:確かに、楽天は早かったですね。でも、座学で学んでも、実際にやってみると違うという場合も多々あるじゃないですか。

伊藤:分かります。数字に落とし込んで事業戦略を練る力って、日ごろの業務で使えるレベルのナレッジとして形式化されるまで、時間がかかるんですよね。

シバタ:自動車の教習みたいなものだと思うんですけど、「こう運転するんですよ」と教わっても、実際の道路では予想もしないことが起きるわけです。

伊藤:そうそう、特にユニットエコノミクスって、競合の存在をあまり意識していない概念なんですよね。そのサービスを自社しかやっていない時はシナリオ通りにいくけれど、仮に他社がダンピング(公正な競争を妨げるような不当に低い価格で販売すること)してきたらどうするの、とか。

 これは、自動車教習所の中だと突然飛び出して来る歩行者はいないけれど、路上に出たら何があるか分からないというのと同じですね。

シバタ ナオキ(しばた なおき)氏
シバタ ナオキ(しばた なおき)氏 元・楽天 執行役員、東京大学工学系研究科助教、スタンフォード大学客員研究員。東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。スタートアップを経営する傍ら、noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。2017年7月に書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(日経BP社)を発刊。ユーザーローカルの顧問も務める