米ウォルト・ディズニー(The Walt Disney Company、以下ディズニー)は2017年12月14日、米21世紀フォックス(21st Century FOX、以下FOX)の映画事業、テレビ事業の大半を約524億ドル(約6兆円)で買収すると発表した。FOXの負債(約137億ドル)も引き受け、総取引額は約661億ドル(約7.4兆円)と巨額だ。買収は2018年6月までに完了する見込みとしている。

 ディズニーはFOXの映画(「X-MEN」「エイリアン」「アバター」「猿の惑星」シリーズなど)、テレビ番組制作(「ザ・シンプソンズ」などドラマ)、エンターテインメント(以下「エンタメ」)系CATV、22の地方スポーツ放送局、ナショナル・ジオグラフィックや欧州のスカイテレビネットワーク、インドのSTARなど海外テレビ事業のほか、動画配信大手Huluの経営権も獲得することになる。エンタメメディア業界では2011年のコムキャストによるユニバーサル・ピクチャーズ買収以来の大型買収案件となる。

 今回の買収で、ハリウッドの6大映画製作会社(ビッグシックス)は5大映画製作会社(ビッグファイブ)になる。さらに、ディズニーがHuluを得たことで、有料動画配信(SVOD:Subscription Video On Demand)での競争がさらに激化すると予想される。今回の動きが動画コンテンツの世界にどのような影響を与えるのか見ていく。

米国6大制作会社(ビッグシックス)
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FOXはニュースに特化した新会社へ

 FOXといえば、「メディア王」とも呼ばれている86歳のルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏が率いている老舗企業だ。豪州出身の同氏は新聞、テレビ、映画、雑誌、SNSまであらゆるメディアの買収や売却を繰り返してきた。

 今後FOXはFox Broadcasting Network、Fox News Channel、Fox Business Network、FS1、FS2、Big Ten Networkなどの放送事業を分離(スピンオフ)し、新たに上場する新会社に担当させる。マードック氏は「新会社はニュースやスポーツなどを強みとする成長企業になる。新たな時代に向けた方向転換になる」とコメントしており、FOXが今後はエンタメではなく、ニュースに特化したメディアを目指していくことを明らかにした。

メディア帝国の形成とFOXの沿革
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 確かにFOXの売り上げを見ると、ニュース専門局FOXニュースを抱える有料テレビ事業の売り上げの増加の伸びが一番大きい。ニュースはそのコンテンツの特性からリアルタイム視聴が通例のため、視聴者が広告を視聴する確率はかなり高く、広告の出稿も多い。ドラマや映画の場合、視聴者は録画したりオンデマンド視聴したりして広告を飛ばしてしまうので、広告主からの引き合いも少ない。だが一方で、FOXニュースの視聴者の平均年齢は67歳とかなり高齢だ。これからは若年層に求められるコンテンツも提供していかなければならないだろう。

 マードック氏が買収による勢力拡大で築き上げた複合メディア企業はかつて「メディア帝国」や「マードック帝国」とまで呼ばれていた。だが、2014年にはタイム・ワーナー(Time Warner)買収を試みたものの、拒否されて失敗。2016年には英国の有料テレビ大手スカイの完全子会社化に乗り出したが、現在でも英国政府の承認獲得に苦戦するなど、ここ数年はその勢力拡大路線も順調ではなかった。そして、多くの買収を重ねて巨大化したメディア企業も、今回は買収される側となった。

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