オンラインストレージサービスの米ドロップボックス(Dropbox)が新規株式公開(IPO)を申請できたのは、「Amazon Web Services(AWS)」をやめて自社環境へ移行したからだった。同社はITストラクチャーの見直しで売上原価率を34ポイントも改善していた。

 ドロップボックスは長らく「行き詰まったユニコーン(未上場ながら推定評価額が10億ドルを超えるスタートアップ)」の代表格だった。同社が最後に資金調達したのは2014年1月。当時の推定評価額は100億ドル(約1兆円)にも達したが、その後は失速。2015年10月には米大手投資会社のフィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)が推定評価額を20%引き下げるなど、投資家から厳しい目を向けられ、IPOも新規の資金調達もできずにいた。

 そんなドロップボックスが鮮やかな復活を成し遂げた。同社は2018年2月23日(米国時間)に上場目論見書(FORM S-1)を米証券取引委員会(SEC)に提出。間もなくNASDAQに株式を上場する見通しだ。ドロップボックスに何が起こったのか。上場目論見書をひも解くと、興味深い事実が判明した。

売り上げは増加、売上原価は減少

 同社の損益計算書(表1)で目を引くのは、過去3年で売上高が大幅に増加しているにも関わらず、売上原価が減少していることだ。2015年12月期決算の売上高は6億380万ドルで売上原価は4億740万ドル、粗利益は1億9640万ドルにすぎなかった。それが2017年12月期には売上高が11億680万ドルと2年前に比べて83%も増加した一方、売上原価は3億6890万ドルと同9%も減少していた。その結果、2017年12月期の粗利益は2年前に比べて276%も増加していた。

表1●ドロップボックスの損益の推移
単位はドル、()内は増減
2015年12月期売上比2016年12月期売上比2017年12月期売上比
売上高6億380万(-)8億4480万(40%)11億680万(31%)
売上原価4億740万(-)67%3億9060万(▲4%)46%3億6890万(▲6%)33%
粗利益1億9640万(-)33%4億5420万(131%)54%7億3790万(62%)67%
R&D2億160万(-)33%2億8970万(44%)34%3億8030万(31%)34%
販売費1億9310万(-)32%2億5060万(30%)30%3億1400万(25%)28%
一般管理費1億790万(-)18%1億740万(0%)13%1億5730万(46%)14%
営業損失▲3億620万(-)▲1億9350万(-)▲1億1370万(-)
純損失▲3億2590万(-)▲2億1020万(-)▲1億1170万(-)

 売上高に対する比率で見ると、そのすごさがさらによく分かる。2015年12月期における売上原価率は67%だったのに対し、2017年12月期の売上原価率は33%。2年間で売上原価率は34ポイントも改善していた。

 ドロップボックスは売上原価率が大きく改善した理由として、クラウドサービスのAWSから自社環境へとITインフラを移行したことなどを中心とする「インフラストラクチャーの最適化」を挙げている。

 同社のユーザー数は現在5億人以上で、ユーザーが保存したファイルの数は4000億個以上、データの容量は1エクサバイト(1000ペタバイト)以上にも達する。それだけの巨大データを扱うITインフラを刷新したのだ。

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