日経SYSTEMS
編集長 森重和春

 「最近はちょっと採用のやり方を変えているんです」。少し前、あるIT企業の幹部と話していて出てきた言葉に、筆者は驚いた。その幹部によれば、ITの専門技術を持つ人よりも、異業種出身の人を採用するようにしているという。

 この会社は、データベースやクラウドの技術を専門にしてコンサルティングやSIの事業を手掛けている。それだけに幹部の言葉は意外だった。昨今の人手不足で専門技術の経験者を採用できず、採用してから教育するというのならまだ分かる。そうではなく、ITをずっとやってきた技術者をあえて選んでいないというのだ。「ITの経験があることは必要だが、その前に違う業界を経験した人、ユーザー企業を経験した人のほうが、今のユーザーのニーズにフィットする」という。

 筆者はこの話を聞いて、人材に関してIT業界が抱える問題を改めて認識させられた。現在この業界では人材不足が大きな課題だ。足りない人材の中身を、今一度しっかり考える必要がある。

「価値創造型」のIT人材が増える

 IT人材の不足感については、いくつかの調査がその実態を明らかにしている。例えば情報処理推進機構(IPA)が2018年4月に発表した「IT人材白書2018」を見ると、IT人材の「量」について、「大幅に不足している」と回答した割合は過去最多の29.7%。「やや不足している」という回答(61.0%)と合わせると、実に9割が人材不足を訴えている。

 IT人材の不足といえば、最近では「企業のデジタル化」が大きな要因の1つだ。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)といった新技術を使い、新規事業を生み出したり、既存のビジネスの構造を変えたりするようなシステムの開発はその典型だ。こうしたデジタル化を支えるシステムの開発に必要な人材が足りなくなっている。

 その実態は前述のIPAの調査結果にも表れている。同調査はIT人材の事業や業務を「価値創造型」「課題解決型」の2つに分けて調べている。前者は「ユーザー企業の事業の価値創造を目的としたIT活用」で、その特徴を「要件が不確実、スピード感を重視、主にアジャイル型で開発」(IT企業のIT事業の場合)と定義している。後者は「ユーザー企業の既存事業の効率化やコスト削減を目的としたIT活用」で、特徴は「要件定義が明確、確実性を重視、主にウォーターフォールで開発」(同)である。

 調査の結果を見ると、IT企業で課題解決型の事業に関わるIT人材が増加しているという回答は30.5%。それに対して、価値創造型のIT人材が増加しているとの回答は約10ポイント高い41.1%だった。

IT企業におけるIT人材の増減
価値創造型の事業にかかわる人材の増加傾向が大きい。(出所:情報処理推進機構『IT人材白書2018』)
[画像のクリックで拡大表示]

 つまり、IT人材は不足しており、そこでの人材ニーズは価値創造型、いわばデジタル化のための人材である。

 AIやIoTなどの新技術の技術者が不足している事実は疑うべくもないだろう。経済産業省はこれら新技術に携わる「先端IT人材」が2020年に4万8000人不足するという予測を2016年に発表している。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら