日経FinTech編集長の原 隆

 筆者は仕事柄、飲む機会が多い。それでも「銀座」は特別な街だ。付き合いで連れて行かれることはあっても、自ら銀座に飲みに行くことはほとんどない。とかくハードルが高いのだ。そんな筆者でも年に1~2回、足を運ぶ店がある。

 きっかけはささいなことだった。筆者はキャリアメールを単純なアドレスに設定していたため、よく間違いメールが届いた。その中に、約2年にわたって自分ではない「原さん」宛てに御礼のメールを送り続けていた銀座のママがいた。本来であれば間違いをすぐに指摘すべきだったが、タイミングを失い、気まずくも返事せずにそのままにしていた。

 約5年前、同じ記者仲間とコリドー街で飲んだ後、銀座を歩いていた。ふと上を見ると、縦にずらりと並ぶ看板の中に、同じ店名を見つけた。恐る恐る扉を開けてママの名前を伝えると、自分の母親と年かさが同じくらいのママが現れた。間違いメールを指摘しなかったことを謝罪して帰ると、後日、自身の写真がプリントされた図書カードが会社に送られてきた。

 銀座で30年以上、ママをしていること以外、もちろん年齢も教えてくれない。だが、身振り手振りを交えた銀座の昔話がとにかく面白い。これがきっかけで、時々銀座近辺で飲むと、お客さんも従業員もほとんどいなくなった時間帯を見計らって顔を出すようになった。

 一言で言えば、きっぷのいいママだ。最初に店を訪れたとき、会計伝票を持ってきたママは「大丈夫?この金額で」と気を遣ってくれた。確実に安く飲ませてくれているのは銀座初心者でも分かった。あるとき、「なんでこんな若造に気を遣ってくれるんですか?」と聞いたことがある。ママの回答は「だって、うちでは、気が付いたらお客さんが死んじゃうからね」。そんなユニークさを持っている。

 先日、久々に、そして確信的にこの店を訪れた。筆者にはどうしてもママに聞きたいことがあったのだ。「キャッシュレス」についてだった。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら