新人研修――。多くのビジネスパーソンにとって1回しか経験できないイベントだ。Windows 98が市場に出回る少し前に、ITベンダーで新人研修を受けた元SEの記者にはもう詳細まで思い出せない。だが、新人研修の数カ月が緊張感のある毎日だったこと、近所の居酒屋で同期とよく飲んでいたことははっきりと覚えている。

 「今年からセブ島で英語とITを学ぶ新人研修をスタートさせたベンチャーがある」。10年ほど前にインドでIT人材を研修する動きを追った経験を持つ記者は、こんな興味深い話を聞きつけた。インドでは当時、日本語教育が盛んなプネなどでITの授業を英語で進め、かつカルチャーギャップを学ばせる目的の研修が盛り上がっていた。

 ITベンダーだけでなくユーザー企業もグローバル人材育成を目指し、若手を向かわせていた。NECグループは新人研修でもインドを選び、たくましく帰国した新人に取材したのを覚えている。インド各地のテロの影響などで一旦は下火になったようだが、その後、買収でインド人社員が急増したNTTデータも新人研修でインドを活用している。

 一方、セブ島といえば英語をスパルタ合宿で身に付ける留学地として有名だ。かつては韓国資本が多かったが、数年前から日本資本も広がっていると聞く。記者の周りでも何人も経験者がいるほどで、英語力を鍛えるのはなるほど合点がいく。

 ただ、IT面では日本とのつながりが濃いとは聞かない。数年前にフィリピンがインドから対米コールセンタービジネスをごっそり奪ったと話題にはなったが、そのコールセンター事業が代表するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やオフショア開発で対日ビジネスはなかなか拡大していない。フィリピンは大学でのIT人材輩出に力を入れていて新卒人数が急増しているものの、最優秀層を取り込んで活用している日本企業はトレンドマイクロ以外に聞こえてこない。

 そんな中、ベンチャーはなぜセブ島を選んだのか。早速渋谷に向かった。訪れたのは、企業のシステム開発案件をフリーランスエンジニアに再委託するマッチングサービス事業やゲーム事業を手掛けるギークスだ。聞くに27人の新人全員を3週間セブ島に送り込んだという。

マン・ツー・マンで1日3時間の英語授業

 2018年4月1日、各社が入社式を執り行うなか、ギークスの新入社員27人は成田空港にいた。入社式を研修後に回し、入社初日から研修に旅立ったわけだ。「入社前に2、3回しか会ったことがなく、よく知らない同期と3週間やっていけるのか不安だった」。マッチングサービス事業を手掛けるIT人材事業本部営業部の新人・牧野千夏氏はその日をこう振り返る。

2018年4月にギークスに入社したIT人材事業本部営業部の牧野千夏氏(左)とゲーム事業推進室の井戸智也エンジニア
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 セブ島では寮で合宿しながら、午前中は朝9時から正午前までフィリピン人の英語の先生とマン・ツー・マンで英語の授業を3コマこなす。ギークスの高原大輔執行役員海外推進本部長は「欧米と比べると圧倒的に英語講師を安価に雇いやすい。だからこそ英語力が最も伸びるマン・ツー・マンが採用できる」と話す。

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