「カバンを置き引きされた」「パスポートを抜き取られた」。モバイル関連で世界最大規模の展示会、2018年2月26からの「Mobile World Congress(MWC) 2018」への海外出張が決まった時、周りから一斉にかけられた言葉がスペイン・バルセロナの“スリ”の脅威だ。ITの力で被害を未然に防ぐ方策を考え、実行してみた。

 スリはポケットなどから金品をかすめ取る行為。対象の周囲を囲んだり、身体を擦り付けたりして窃盗の機会をうかがう。バルセロナのスリはどうか。地下鉄の乗り降りの際にポケットやバッグを探る、液体をかけて注意がそれた隙に盗む、等々、在外公館のページで一通りの手口を調べて達した結論が「財布を持たない」だった。

財布を取り出す脆弱性をITでふさぐ

 まずは出発前の準備からだ。定量的な指標として「守るべき対象から注意がそれる」時間を極力少なくすることにした。守るべき対象を減らした上で、そこから広い意味で目を離さない。

 守るべき対象はパスポートとクレジットカード、そして仕事用のスマートフォンに決めた。自分の注意を向ける対象を、クレジットカードとパスポートに集中させる。ジッパー付きの内ポケットに入れ、ここを死守する。胸元に侵入される場合はもはや強盗なので金品は諦める。

 現金は取り扱いの際に「どの紙幣と硬貨を出すか」を考える際に、注意がそれがちだ。バルセロナはMWCの開催地だけあって、モバイル決済が盛ん。大抵の店舗では米アップルの「Apple Pay」が使える。とはいえMWC会場への足となる地下鉄は、Apple Payでは支払えない。MWCのパスには会期中有効の乗り放題チケットが付属するが、MWCの取材は開催日前から始まる。券売機の仕様を調べると、クレジットカードは使えるようだ。

 会場と周辺イベントの取材には、タクシーが必要になる場面が出てくる。タクシーは、現金が無いと困る移動手段の代表格。そこは配車サービスの「Uber」で、と思ったが、バルセロナを含むスペインでは業界団体と係争状態で、事実上利用できない。代替策を調べると、ドイツのインテリジェント・アップス(Intelligent Apps)が運営する配車サービス「mytaxi」がバルセロナでは主流のようだ。同サービスはiOS/Androidのmytaxiアプリで、バルセロナ公認のタクシーを数分で呼べる。

配車アプリ「mytaxi」の利用イメージ。バルセロナのタクシーで使えるUber風のアプリ
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 使い勝手はUberアプリと同等だ。地図上でタクシーの位置をリアルタイムに把握でき、顔写真付きで運転手の評価が分かる。決済には事前に登録したクレジットカードやPayPalアカウントが使える。目的地に着いたら、チップの割合を選んで決済ボタンをスワイプするだけ。利用明細はメール添付のPDFで送られてくる。

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