資生堂がAI(人工知能)などのデジタル関連投資を急拡大させている。2020年度までの中期経営計画で約520億円を投じると明かしている。魚谷雅彦社長はビジネスや業務のデジタル化を「今後3年間の最優先事項として進めたい」と意気込む。デジタル投資を加速させる狙いと経営戦略を魚谷社長に聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝、染原 睦美=日経xTECH/日経コンピュータ)

インタビューに答える資生堂の魚谷雅彦社長(撮影:村田 和聡、以下同じ)

中期経営計画で2020年度までのデジタル投資を合計520億円としました。どんな分野に投じますか。

 520億円の内訳はITインフラ投資に270億円、デジタル関連のマーケティング投資に250億円です。特に、ITインフラ投資については強い問題意識があります。グローバルで見れば、日本の労働者は働き過ぎと言えるほど働いている。一方で、ホワイトカラーの生産性が低いのは顕著です。例えば、資生堂で見ても、皆まじめで会議に膨大な資料を持ってきます。「はじめに」だけで30ページついているようなケースさえある。私は資料と説明を3分の1にしてくれと話しています。

 3分の1にしようと思うと必然的にポイントを考えるようになります。アイデアを通したいのか、資金が欲しいのか、私と議論したいのか。資料の量や説明を3分の1にするために使えるデジタルツールは、世の中にはたくさんあります。テレビ会議一つとってもそうですし、オンラインでグループ討議だってできる。

 残った3分の2は、どうぞ家族との時間や好きな趣味に使ってくださいと。その方がよいアイデアが生まれるはずです。資料を作る時間や能力をクリエイティビティを発揮するために使って欲しいと思っているのです。商品を考えたり、生産性を上げたり。アウトプットに使って欲しい。

資料は経営者を甘やかすだけ

 (膨大な資料は)社長以下経営層を甘やかすことにもなります。そもそも資料でよく描かれる背景説明や市場規模などは経営層が前提として理解しているもの。理解していなければ、(私が)このポジションにいる資格はありません。丁寧に説明しないと意思決定できないなんておかしいですよね。そうではなくて「あなたの言いたいことだけを言ってください」というわけです。

iPadを肌身離さず使っていると聞いています。

 一応、自称iPadの鬼です。海外投資家などへの説明で海外に行ったときも、ニューヨークから東京へ帰る13時間のうち8時間はメモを作り、それを役員にメールしています。そうすると昨日アメリカで議論したこと、投資家や株主から資生堂の経営について多様な意見があったことが、すぐに何十人という役員と共有できるわけでしょう。

 早く共有できれば、すぐにそれに対するアクションを考えて行動に移せる。今は機内Wi-Fiがありますからすぐにその場で送信できます。昔はありませんでしたから、羽田空港に着いたときの最大の喜びが何だったかといえば、「送信」ボタンを押すことでしたね。

 iPadの活用は僕からの発信だけに使っているわけではありません。従業員からも「今日は仙台でこんなイベントをやったら、こんなに売れました」といったような報告がすぐに入ります。それに対して「素晴らしいね」という返信もすぐにできます。

 こうしたことは今に始まったわけではないですが、私たちのような事業会社は、まだまだ活用できていない。活用できればもっと組織として進化する。そう思うことがたくさんあります。

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