人工知能(AI)ベンチャーのアラヤを率いる金井良太氏は、もともと脳科学者として欧米の大学で研究を続けてきた。日本に戻り起業したのは、物心つくころから追い求めてきた難問に答えを出す近道がそこにあると判断したからだ。意識の謎の解明である。意識を人工的に再現し、産業用途に役立てることで、積年の課題に決着をつけようと意気込む。(聞き手=今井拓司)

金井 良太(かない・りょうた)氏
2000年に京都大学 生物物理学科 卒業。2005年、オランダUtrecht Universityで実験心理学のPhDを取得。米California Institute of Technologyにて、下條信輔教授のもとで視覚経験と時間感覚の研究に従事。2015年まで英University of Sussex 准教授(認知神経科学)を務める。2015年にアラヤを創業し、代表取締役 CEOに就任。(写真:加藤 康)

 アラヤでは、人工的に意識を作ることを通して、意識の機能とは何なのかを解明したいと考えています。2015年に科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)に採択されて研究開発を進めてきました。

 意識については、子供の頃からずっと興味がありました。3歳くらいのころ「マリモは生きている」と言われて衝撃を受けたんです。生きているとは心があることだと思うんですが、それは一体どういうことなのか。木は生きているのか、床は生きているのか。床は踏まれて痛いのか、などと考えたりしていました。

 高校生の時にソシュール言語学を学ぶ機会があり、言葉の意味は、それ自身にあるのではなく、他の言葉との関係から決まると教わりました。同様に、自分が赤い色を見ている時、脳の中では他の色との関係性しかないはずです。それなのに、何で赤という具体的な色が生まれるのか。関係性だけなら神経活動の物理的な現象を全部記述できれば十分なのでしょうが、そこには実際の経験が存在していて、それにはすごく意味がある。一見、無に見えるところに言葉の意味や意識が生まれるのはどういうことなのかと。

 当時はそれを数学で記述できるんじゃないかと思っていたんです。哲学の本を読んでも曖昧な内容が多いですが、数学は証明や具体的な結論を出してくれますから。

 数学や科学に対する信頼も、子供のころからありました。科学の発見には単なる人の想像を超えた圧倒的なものがある。ブラックホールが存在するとか、量子力学の世界とか。しかも、そうした日常的に経験できないものを、科学を通じて理解できる。科学と比べると、例えば色々な宗教の世界観は人が作った感じがして陳腐に思えるくらいです。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら