経団連次期会長に内定した日立製作所の中西宏明会長。2010年に日立の社長に就任して以降、自ら立て直して黒字化させたハードディスク事業を電撃売却したり、最新テクノロジーでより良い社会づくりに貢献する「社会イノベーション事業」への転換を図ったりするなど、大胆かつ合理的な舵取りで日立を成長軌道に乗せた。日本を代表する経営者であり、デジタルイノベーションに造詣の深い中西氏に期待されるのは、産業の構造改革をリードすること。大役を担う中西氏は今、何を考えどう動くのか。

(聞き手は戸川 尚樹=日経 xTECH IT 編集長、編集は竹居 智久=日経 xTECH/日経コンピュータ)

経団連会長に就任されます。経済界のリーダーとして、日本企業が特に力を入れるべきことは何だと考えていますか。

 デジタル化の波は、社会基盤を根底から変えて新しい産業を生み出します。こうした現実に対して、日本の産業全体が真正面から向き合って新しい産業を興していく、ということだと思います。

日立製作所の中西宏明会長
1946年生まれ。1970年東京大学工学部卒業、日立製作所に入社。1993年大みか工場副工場長、1998年日立ヨーロッパ社長、2003年国際事業部門長、2005年北米総代表兼日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)会長兼CEO(最高経営責任者)などを歴任。2010年に日立製作所社長。会長兼CEOを経て、2016年から現職。2018年5月末に経団連会長に就任予定。(撮影:陶山 勉、以下同じ)
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 企業は今、デジタルイノベーションを実現するために、事業や部門の垣根を越えて、異なる業種業態の新たなパートナーと上手に連携しなければなりません。これを実践できた企業が、あっと驚くようなビジネスで世界を変えていける。米アマゾン・ドット・コムはその典型例でしょう。日本企業もこうした方向に進んでいくべきだと思います。

 デジタル化とは、様々な事象をデータとして把握し、それを上手に生かして物事を運営していくことです。デジタル化はテクノロジーの変化というよりも、社会基盤の変化にほかなりません。

 こう考えて私は、日立製作所の社長に就任したころからずっと、社会イノベーション事業の強化を進めてきました。さらに日本の産業をそうした方向に推し進めたいと思い、ここ数年は経団連の副会長として対外活動をしてきました。

 世界は今、クオリティー・オブ・ソサエティー(社会全体の質)を上げる方向に進んでいます。これまではクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)を向上させるために、デジタル技術が使われてきましたが、今後は社会全体の質を上げることにどれだけ本気で取り組んでいけるかが大切になるということです。

 日本では、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を使ったスマートな社会である「ソサエティー5.0」という言葉が出てはいますが、皆がなんとなく「そういう方向だよね」と感じている程度ではだめです。本気になって実際に動かなければ、実現などできません。

デジタル化に関心を持ってはいても、事業変革を進めて成果を上げている日本企業はまだ多いとはいえません。日本企業はデジタル化で遅れていると思いますか。

 いや、日本企業が遅れているとは思いません。ただ日本企業は控えめなところが多いからね。大きなことを言わずに謙虚にやっているため、目立っていないだけでしょう。訴え方が足りないだけだと思います。

 そもそも海外企業のデジタル化が順調かというと、そうとも言い切れませんよ。例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスが、デジタル化の強化を進めてきましたが、今は「ちょっと待てよ」という状況。正しいビジネスモデルなのか、もうかるのか、社会で評価されるのか。こうしたことを一歩引いてみて評価している段階です。

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