「2020年代前半に一度、電気自動車(EV)から燃料電池車(FCV)への揺り戻しが必ず起きる。このタイミングがFCVにとってのターニングポイントになる」。潮目の変化を“予言”するのは、トヨタ自動車でFCV開発を担当する河合大洋氏(同社先進技術開発カンパニー先進技術統括部環境技術企画室主査担当部長)だ。

 EVは中核部品のリチウムイオン電池の低コスト化が進み、2020年ごろに200万円台まで車両価格が低減する可能性が出てきた(関連記事:2020年には“激安EV”、日産やホンダが新プラットフォームで)。日産自動車やドイツ・フォルクスワーゲン(VW)などが量産EVを投入し、脱エンジン車時代の主導権を握ろうと躍起になっている。

 FCVは消えるのか――。トヨタが2014年に発売したFCV「ミライ」は700万円以上でありながら、コストが高く「売れば売るだけ赤字が増える」(河合氏)状態にある(図1)。水素ステーションの整備も進んでおらず、2015年までに100カ所設置するとしていた当初計画は3年も遅れ、2018年春までずれ込んだ。

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図1 職人による手作りで生まれる「ミライ」
トヨタの元町工場(愛知県豊田市)にあるミライの生産ラインの様子。(出所:トヨタ自動車)

利点はガソリン車と同等の使い勝手

 それでも、EVとの比較でFCVには利点がある。水素の充填は3分ほどで済み、急速充電でも30分ほどかかるEVに比べて使い勝手が良い。航続距離も700km以上を実現可能で、ガソリン車に慣れたユーザーにとっては違和感が少ない(図2)。使用中にCO(二酸化炭素)が発生しない点はEVと変わらない。

図2 トヨタが想定する将来の自動車の「すみ分け」に関するイメージ
FCVは中・長距離用途を中心に、顧客の要望を踏まえて多様化する考え。(出所:トヨタ自動車)
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 水素が多様な1次エネルギーから製造可能なこともポイントの一つだ。再生可能エネルギーの電力を水素の状態で貯蔵しておけばよく、「CO低減とエネルギーセキュリティーの両面で環境社会の実現に向けて有効」(本田技術研究所四輪R&Dセンター上級研究員の守谷隆史氏)とされる。

 トヨタの読みでは、低価格のEVと使い勝手のFCVを消費者が天秤にかけるのが2020年代前半となる。この時に、「FCVが抱える問題を解決できていないと未来はなくなる」(河合氏)。劣勢をひっくり返す反攻の“のろし”として、トヨタは「燃料電池(FC)システムのコストをミライから半減させたFCVを2020年ごろに投入する」(同氏)という。

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