1985年の民営化から33年、黒電話の会社だったNTTがIT企業へと姿を変えつつある。かつては売り上げ全体の7割を占めていた音声通信収入は今や2割まで減少。海外で大型M&A(買収・合併)を加速し、国内外でIT事業の拡大を急ぐ。ただ、過去の海外買収は失敗続き。果たして事業変革はうまくいくのだろうか。成否のカギは3つの「脱」にある。決まったサービスを提供する通信会社の考え方を脱し、顧客のニーズをくみ取れるか。自前主義を脱し、外部企業と柔軟に手を組めるか。海外で利益を上げる事業モデルを確立し、国内に頼る「内弁慶」から脱却できるかだ。

 通信事業者は「成熟化」「同質化」「土管化」という三重苦に陥ってきた。大手事業者の寡占でサービスや機能にさしたる違いはなく料金もほぼ同じ。ただ通信経路を提供するだけの存在になりつつあった。

 ここから抜け出す切り札としてNTTは「B2B2X」と呼ぶ事業モデルを掲げる。Xは消費者や企業などのエンドユーザーを指す。Xを開拓するために、「B(NTT)→B(顧客層を持つ法人)→X(エンドユーザー)」の流れでサービスを提供する。

 典型的なのがNTT東日本が開拓した医療機器メーカーの事例だ。医療機器を遠隔で保守するクラウド基盤のほか、医療機器を病院や診療所に設置するための回線敷設や設定導入支援までを一括受注。医療機器メーカーの先にいる病院などにリーチできた。

法人を支援し、その先にいる顧客にリーチ
図 NTTが注力する法人市場戦略「B2B2X」の狙い
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地域の観光客を丸ごと分析

 提携先のメインプレーヤーとしてNTTが特に注力するのが地方自治体だ。自治体の課題をITで解決すれば、その先にいる地域企業や市民も恩恵を受ける。社会的な課題の解決につながり、ビジネスも拡大できるわけだ。公共性を常に求められると同時に、企業として一般株主や大株主の国に配当を出さなければならないという使命を負う立場のNTTにとって、絶妙なビジネスモデルである。

 2015年には札幌市や福岡市とICT活用に関する包括的な連携協定を結んだ。交通や除雪、ゴミ処理から観光振興まで自治体の課題解決プロジェクトにNTTがITの面から協力する。

 先陣を切って、地方の課題解決の可能性を占うプロジェクトが札幌市で2018年2月中に始動する。外国人観光客の動向データを統合し、関係者が共有して消費活性化につなげるプロジェクトだ。NTTドコモが持つ位置情報やNTTデータ子会社が分析する人気商品データ、参加する流通業が開示する商品やサービスの販売実績データなどを、NTTデータが運営を受託するクラウド基盤で統合。関係者が参照できるようにする。ライバルのデータも参照できるという異例の取り組みながら、札幌市内の30超のデパートやドラッグストア、宿泊施設などが参加する。

 2017年の先行プロジェクトで手応えを得たという。NTTドコモが提供する位置情報は国・地域別の観光客の動線を明らかにして、「積雪を楽しめる市内の公園」など隠れた人気スポットをあぶり出した。商店街での客の動線も分かってきた。

地方自治体からスポーツ団体まで開拓
図 NTTが開拓した「B2B2X」の法人顧客と案件の例
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