フランスの造園技師であるジョセフ・モニエが鉄筋コンクリートの原形となる技術の特許を出願してから、150年がたつ。圧縮に強いコンクリートと引っ張りに強い鉄筋の組み合わせは、構造物の設計の自由度を飛躍的に上げ、建設分野に新風を吹き込んだ(図1)。

図1 モニエによる鉄筋コンクリートの特許図
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 一方で、鉄筋とコンクリートの融合体は、弱点をはらんでいた。コンクリート内に拘束されている鉄筋は、塩分や水がかかるとさびて膨張し、コンクリートを内側から劣化させる。以来、技術者はさまざまな新材料を模索して、モニエの発想を超える構造材を提案してきた。

 鉄筋に置き換わる材料はまだ台頭していないものの、後人の挑戦で、徐々に新しい材料が勢力を拡大しつつある。鉄筋の牙城に割って入ろうとしているのが、炭素繊維とプラスチックから成る炭素繊維強化樹脂(CFRP)のロッド材だ。

 繊維を編んでシート状にすると、本来の繊維が持つ引張強度を十分に生かしきれない。一方、真っすぐに糸をそろえたロッド材は、繊維の持つ高い強度を存分に生かせる。

 実用化に向けて、CFRPロッド材の試験が先行している。土木の場合、過酷な環境下において100年スパンで供用する可能性がある。屋内試験における物性値の確認だけでは不十分で、屋外での暴露評価も重要になる。

 そのため、金沢工業大学は文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム」(COI)において、炭素繊維ロッドなどの暴露試験を実施している(図2)。気温や紫外線量、湿度、飛来塩分量などが異なる自然環境下で性能の変化を見る。

図2 暴露試験用の繊維強化樹脂ロッド
熱可塑性や熱硬化性の炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、バサルト繊維などの強化樹脂を1セットにして、全国で暴露試験を実施している(出所:日経コンストラクション)
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 CFRPロッド材を現場で扱うことを想定した試験も進む。長大なコンクリート構造物では長尺な引張部材が必要になり、これまでは鉄筋を溶接、圧接などしていた。一方、熱可塑性エポキシ樹脂のCFRPでは、現場で溶着することが想定される。熱を加えると軟化して冷却すると固化する特性を持つからだ。これまでの室内試験で、板状の熱可塑性CFRPだと、10秒以内にくっつくことを実証している。

 現在、COIでは直径9mmの熱可塑性CFRPの連続成形に成功。「プレストレスト・コンクリート(PC)鋼材の代替材として活用するため、さらなる太径化を目指す。直径15mmで1700N/mm2超の引張強度を発揮させたい」。研究に関わる金沢工業大学大学院の宮里心一教授は、こう意気込む。

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