炭素繊維を利用した材料では、小松精練などが開発した炭素繊維複合材料「カボコーマ・ストランドロッド」を用いて建築物を耐震補強する取り組みにも挑戦されましたね。

 炭素繊維複合材料の利点は、形状を変えて現場に運べる点にあります。以前は炭素繊維を用いた製品といっても、棒のような硬い塊の材料でした。そのため、現場への運搬や施工性に難があったのです。長い繊維材料として現場に持ち込みやすくして、現場で引っ張って伸ばしながら使えるようにした結果、建築に使いやすくなりました。

小松精練の旧本社棟を耐震改修して展示体験型の施設にリニューアルした。建物を取り巻くカーテンのドレープのように炭素繊維複合材料を張り巡らせた(撮影:日経アーキテクチュア)
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 さらに、使ってみて大きな利点だと感じたのは、熱延びしない点です。ステンレスや鉄といった金属製ワイヤで構造物を補強すると、1年に1回は延びに対する締め直し処理が要ります。

 でも炭素繊維であれば、そのような手間が要らない。構造物のライフサイクルコストが重視される時代になりました。将来の維持管理を考えれば、これは大きなメリットとなるはずです。

 既存建築物の耐震補強向けだけでなく、新設の建物に用いた事例もあります。静岡県熱海市内で2017年9月にオープンしたカフェ「COEDA HOUSE(コエダハウス)」です。キャンチレバーの先端をカーボンで引っ張って補強しました。

2017年9月に静岡県熱海市内に完成したカフェ「COEDA HOUSE(コエダハウス)」。隈研吾氏が設計を手掛けた(撮影:川澄・小林研二写真事務所)
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以前、高級車の「レクサス(LEXUS)」のイメージ戦略の中で、上質な風呂場の空間を提案して東京タワー内に展示されましたね。そちらにも炭素繊維複合材料が使われていたのではないでしょうか。

 風呂を囲むように炭素繊維複合材料を使ってみました。今までのステンレスや鉄といった金属だと触感が冷たくなります。ですから、風呂場などには使う気がしませんでした。

 けれども、炭素繊維を用いた複合材料は、鉄の7倍の引張強度を持つと同時に、人間が触れても冷たくなく、木と同じような感触を与えてくれます。組成が炭素という点も、木と似ていますから。

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