2020年の東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の設計を手掛ける建築家、隈研吾氏。同スタジアムでは、観客席を覆う屋根架構に木と鉄のハイブリッド構造を用いる。ほかにも、1968年に完成したビルをロープ状の炭素繊維複合材料で覆うように耐震補強したり、ETFE(熱可塑性フッ素樹脂)フィルムを壁として用いたりするなど、さまざまな材料を用いて斬新な建築を生み出している。建築における材料の位置付けを重くみる隈氏に、建設の領域だけでなく、製造業なども含めた材料の可能性と材料技術の重要性を聞いた。

隈さんはさまざまな素材を建築に活用していますね。これからの世の中を変えるようなインパクトを持つ素材はありますか。

 一番期待したいのは木です。木は人間の身体に一番相性のいい素材だと思います。人類は太古から木を使って生活してきました。古代ギリシャ建築は石の建築だと思われがちですが、実は木が多用されているのです。

 垂木(屋根の下地となる構造材)のデンティル(歯型装飾)などが昔のギリシャ建築に反映されています。木を切り過ぎて、石の建築になったのですが。そんな歴史を踏まえても、木には人間の身体との相性の良さがあるのだと思います。

隈 研吾(くま けんご)
1954年横浜市生まれ。79年に東京大学大学院を修了。87年に空間研究所、90年に隈研吾建築都市設計事務所をそれぞれ設立した。2008年にKuma&AssociatesEurope(パリ)を設立し、09年から東京大学教授を務める。2020年に開催される東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場を設計するほか、JR東日本が建設する品川新駅のデザインアーキテクトも務める(撮影:吉成 大輔)
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 これからの建築の1つの大きな方向性として、セルフビルドが挙げられます。自分で自分の空間をつくったり、自分で自分の空間を変えたりできるフレキシビリティーが大切になってくるのです。木は後から手を入れやすい。時間とともに建築が移り変わるという点でも注目の材料です。

 日本の木造住宅は、大工が手直しできるような構造を持っています。日本の木造のすごさは、柱の位置だって変えられる可変性にあるのです。世界では、構造をそのままにして仕上げを変えるというのが一般的な改修法です。

 一方、日本の木造には、江戸時代から「和小屋」という屋根のシステムが存在します。屋根をしっかりと固めていて、下の柱を動かせるシステムです。とても進歩した技術といえます。世界に例のないフレキシブルなシステムで、長期的な視点で見て、日本の木造には大きな可能性を感じます。

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