省エネ基準への適合性判定が始まって、ZO設計室ではより早い段階で意匠設計者から相談を受けるようになった。断熱性能の確保を中心に省エネ基準への適合を図るなか、意匠設計者とうまくコラボレーションするには、目標の共有が不可欠という。

柿沼 整三|Seizo Kakinuma 1977年工学院大学工学専攻科建築学専攻修了。81年ZO設計室主宰。87年有限会社に改め代表取締役就任。関東学院大学非常勤講師、東京建築士会環境委員会副委員長、東京理科大学非常勤講師、空気調和衛生工学会住宅設備BIM活用検討小委員会主査などを歴任。建築設備関係図書の執筆は多数あり、最近の著書に「設備設計スタンダード図集」(オーム社)(撮影:大久保 惠造)
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省エネ基準への適合性を判定する、省エネ適判の制度が始まって、仕事の進め方に変化はありますか。

 制度開始の2017年4月より前に建築確認を済ませる駆け込み申請が多かったのですが、5月ごろから再び動き出しました。それ以降、設備設計を担当した案件に関してはいずれも、省エネ基準をクリアしています。

 近年、意匠設計者からの相談は比較的早い段階から受けられるようになってきました。設備を重要視し、意匠性と省エネ性のバランスはどうあるべきかを早い段階で一緒に考えていくという意識が高まっているので、私たちとしては仕事がやりやすくなりました。

 ただ事業の性格上、建築確認を早く済ませておきたいという建築主の案件は、実施設計完了前にその手続きに入らざるを得ません。つまり、省エネ適判のために実施設計完了前に空調機の能力などを決める必要が生じます。そうなると計画変更は必至です。イレギュラーな進め方を強いられますが、その苦労は意匠設計者には伝わりません。

このショールーム(山口県周南市)は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」で定める「特定建築物」として、省エネ基準への適合性判定の対象になった。主要用途は、カー用品の販売と整備工場である。(撮影:FLAT HOUSE)
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省エネ基準への適合性判定をクリアしたショールーム。3面ガラス張りのため、省エネ基準への適合には細かな注意を払って設計を進め、結果的には、問題なく適合義務を果たし、着工・完成に至ったという(撮影:FLAT HOUSE)
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意匠設計者の省エネに対する意識は、どうご覧になりますか。

 意識の高い設計者がいる一方、無頓着な設計者もいます。省エネ適判が制度化されたものの、その内容をまだよく理解していないという設計者も決して少なくありません。

 プランの説明を受けて省エネ基準に適合していない場合には、断熱性能を高めるよう要請します。

それはコストアップになりますが、意匠設計者は理解を示しますか。

 それはもう、半ば脅しです。「省エネ基準をクリアできませんよ」と。適合義務が求められる床面積2000㎡以上の非住宅建築物はもちろん、いまは届け出義務にとどまっている300㎡以上の建築物全般に対しても、そのように応じています。