ここ数年、土木構造物に絡んだ品質問題が目立っています。中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落、羽田空港での地盤改良工事の不正、橋の部材の溶接不良など、外から見えない箇所で不具合が発生していたことが共通点です。

 不可視部分の不具合を外から確認するのが非破壊検査です。橋などの部材の一部を切り出して直接、状態を調べる「コア抜き試験」とは異なり、構造物を傷付けずに状態を把握できます。人の体で言えば、細胞や組織を取り出して検査するのではなく、聴診器やX線、MRIなどを使って検査する方法です。

 非破壊検査自体は長い歴史があり、その手軽さから多くの手法が利用されています。ただ、それらは言わば「教科書に載っている技術」。定番化しているが故に、日経コンストラクションが記事として取り上げる機会はこれまで多くありませんでした。

 ですが最近、冒頭で紹介したような背景を受け、非破壊検査の技術が大きく動き出しているようです。日経コンストラクション3月12日号では、特集「『壊さない』が正義!」を企画し、非破壊検査を巡るトレンドを追いました。ドボクの安全を守る強い味方「非破壊戦隊 コワサンジャー」(!?)が、分かりやすく解説します。

日経コンストラクション3月12日号特集「『壊さない』が正義!」から
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 コンクリート中の鉄筋位置を知りたければレーダー法、ひび割れの深さを測りたければ超音波法といったように、知りたい情報に応じて様々なメニューがそろっています。ただ、非破壊はひび割れや鉄筋といった「物理的」なものを探るのには向いていましたが、塩化物イオン量のような化学的な成分の把握をあまり得意としていません。塩化物量を調べるためには、コアを抜くなどして直接、コンクリートの成分分析をしていました。

 それが今、遠方からの観察で塩化物イオンの量を把握する方法が実用化されつつあります。その1つが赤外線の利用。赤外線は従来、コンクリート表面の温度差を計測して浮きや剥離の位置を特定する「赤外線サーモグラフィー法」で使用されていましたが、それと同様のイメージで、コンクリートから1~2.5m離れた位置から近赤外線を照射すれば、表面の塩分濃度の分布が分かるという技術です。

 もう1つが、非破壊界のニューフェイス、中性子線の利用です。コンクリートに照射すると、数十センチメートルの深さまでの塩分濃度を計測できることが分かってきました。いずれの手法も、精度や使い勝手の面でまだ発展途上ですが、化学的な性質が遠方から分かるというのは画期的なことです。最終的にはコアを抜いて成分分析をするにしても、スクリーニングには非常に有効です。非破壊、しかも遠方から成分を調べられる技術は、構造物の維持管理に革命を起こす可能性を秘めています。

出典:日経コンストラクション、2018年3月12日号
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