デジタル戦略がビジネスの成否を大きく左右する昨今、主に社内システムの子守を手掛けて来た情報システム部門(情シス)のあり方が問われています。情シスを、ビジネススピードを阻害する妨害者と考える人もいます。「情シス不要論」がささやかれ、第2のIT部門を設立する企業も出てきています。

 私は、そんな情シスに身を置く一人です。大手自動車メーカーに勤務し、情シスが担うべき役割や、自分自身のキャリアについて悩みながら日々を過ごしてきました。壁にぶつかることも多くありますが、クラウドという新技術に挑戦したり、個人で「キャリアコンサルタント」の資格を取得したりと、自分なりの格闘や試行錯誤を重ねながら突破してきました。

 本コラムでは、私自身の体験談を織り交ぜながら、ITにかかわる人たちのスキルアップやキャリアアップに役立つヒントをお伝えしていきたいと考えています。初回である今回は、私に大きな転機をもたらした2つの出会いを紹介します。

30歳を目前にして深く悩む

 私は今でこそ、積極的に社外の勉強会に参加したり、イベントに登壇したりしています。2016年に、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のコミュニティ活動を牽引する「AWSコミュニティヒーロー」に選ばれたこともあって、「クラウド業界で活躍している人」とのイメージを持たれることもあります。

 でも入社後5年間ほどは、社外の勉強会に参加したことすらありませんでした。その存在も、意義も知らずにいました。大企業の情シス部員として、社内に目を向けて業務をこなしていたのです。

 元々、私は情シスを希望して入社したわけではありませんでした。人間に興味があり、ヒト型ロボットの開発に携わりたいと考えていました。ですから情シスに配属になったときから、ここが本当に自分の居場所なのかという思いはどこかに抱えていました。

 でも、深刻な悩みには発展しませんでした。自社の組織風土には魅力を感じていたし、逆に自分の希望ではない場所だからこそ、視野を広げられると前向きに捉えていました。業務でも、手を動かしながらITインフラの知識を身につけられたし、周囲の先輩や同僚にも恵まれていました。

 転機が訪れたのは、入社6年目の2012年。私は29歳になっていました。30歳という人生の節目を目前にして今後の自分自身のキャリアについて真剣に考え始め、次第に深刻な悩みや迷いを抱くようになりました。

 「このままここにいていいのか。これが、自分が本当にやりたかったことなのか」

 「自分の強みは何か? 自分が大切なものや、苦手なものはどんなことか?」

 「自分はこれから数十年、どんな人生を歩みたいのか?」

 ちょうどそのころ、自社のIT領域に関する大規模な組織変更がありました。私の働く環境も激変し、その影響で仕事に対するモチベーションが大きく左右されるという経験をしました。その結果、「なぜ人は働くのか」「人を成長させる組織とはどんなものか」といった疑問も感じるようになりました。