時代をリードする多くの建築家たちと協働してきた藤江和子氏。建築家との公私にわたる付き合いを通して、仕事への取り組み方から建築に対する考え方まで多くを学んだ。一方で悔いを残すのは、自身が身を置く家具デザイナー界の人たちとの交流だ。当時は、倉俣史朗氏や大橋晃朗氏などと深い会話を試みるまでの自信がなかった。(全3回のうちの第3回)

藤江和子氏(写真:花井 智子)
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 私は若い時期から多くの建築家と交流できる環境に恵まれ、彼らから多くのことを学んできました。

 例えば、独立初期には山本理顕さん(山本理顕設計工場)や元倉真琴さん(スタジオ建築計画)と同じ部屋に事務所を構えていました。お互いの事務所の境界は本棚で仕切っただけなので、電話の声や発注者との打ち合わせでの侃々諤々(かんかんがくがく)のやり取りもすべて筒抜けでした。本も共有していたので読み放題。人のつながりが深く、濃密な環境でした。

 この時期、2人には仕事に対する考え方を学びました。

 山本さんは社会性に富んでいる人で「何が正しいのか」「デザインとは何か」を常に深く考えています。時には発注者ともけんかする強さと信念を持っているところは、昔も今も変わりません。元倉さんは対照的で人当たりは柔らかいけれど、本質を刺し通す見方がとても鋭い。信頼できる人たちで、昨秋、元倉さんを失ったのはとても残念です。

 デザイナーはアーティストと違って、仕事を実現していく過程ではいろいろな関係者とのやり取りが必要になります。そのなかで時代の考え方も汲み取りつつ、一方では正しいと考えることについては筋を通す大切さをたたき込まれたように思います。

 また、仕事を離れて建築家の人たちと旅行に行くのも楽しい体験です。イタリアをはじめとするヨーロッパ、モンゴル、インド、東南アジアなどいろいろな土地をグループで回りながら、都市や建築や歴史、社会に関する豊富な話題が飛び交う環境に身を置くのは刺激的です。

古谷誠章氏らと車2台で回った3回にわたるイタリア旅行での1コマ。モンテプルチアーノでのランチ風景
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 古谷誠章さん(早稲田大学教授)など古くからの付き合いの人もいる一方で、伊東豊雄さんのようにここ10年で多くの仕事をするようになった建築家もいます。

 伊東さんとの仕事は2007年の「多摩美術大学図書館」が初めてでしたが、その後、「みんなの森 ぎふメディアコスモス」(15年)、「台中国家歌劇院」(16年)など数多くご一緒しています。建築の方向性が明確なプロジェクトは、いつも楽しいですね。

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