量子コンピューターに対する期待が日増しに高まっている。

 2つある量子コンピューターの方式のうち、実用化で先行した量子アニーリング方式は、カナダのディーウエーブ・システムズ(D-Wave Systems)が2000量子ビットの商用量子コンピューター「D-Wave 2000Q」を市場投入した。量子アニーリング方式は、汎用的に使えないが、人工知能(AI)の学習に欠かせない組み合わせ最適化問題の高精度の解の導出に活用し、より賢いAIを実現するための手段として期待されている。

 一方、既存コンピューターと同様に、汎用性の高い量子ゲート方式の技術開発も着々と進んできた。米IBMや米グーグル(Google)などは、1000兆通りの状態を重ね合わせ合わせた演算が可能な50量子ビットのマシンを数年以内に実現すると見られ、材料開発・創薬での量子シミュレーションなどへの応用が期待されている。

 技術開発が進み、応用面での期待感が日増しに高まる量子コンピューターだが、今回のテクノ大喜利では、1つの素朴な疑問に注目した。半導体をはじめとする電子部品産業に、ビジネス面または技術開発面でどのようなインパクトをもたらすのだろうかという疑問である。

量子コンピューターのハードはとにかく異質

 量子コンピューターは、既存のコンピューターとは、処理の原理やシステム構造があまりにも異なる。既存のノイマン型コンピューターを高度化することに最適化した技術やビジネス構造が、量子コンピューターの事業化や産業化にどのように貢献していくのかは未知数だ。

 実用化されている量子コンピューターの内部構造やチップを見ると、初見の人は大抵びっくりする(図1)。冷蔵庫もしくは物置といった見た目の機体内部は、天井から鍾乳石のような柱が垂れ下がっただけの空間。その柱の先に処理中枢である特殊なチップがたった1個取り付けられている。機体内に、膨大な数の半導体が詰め込まれている従来コンピューターとは明らかに異なるハードの構造になっている。

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図1 量子コンピューターの機体とチップ
出典:IBM、D-Wave Systems

 また、その中枢部となるチップは、材料には超電導材料など特殊なものが使われる場合もあり、その一方で微細高集積とはほど遠い粗いパターンで作られている。そして、1機体当たりの搭載量もわずかだ。高度な微細加工技術を生かして集積度の高いチップを大量生産する、従来の半導体ビジネスの常識が通用しないチップであることは明らかだ。

 今回のテクノ大喜利は、量子コンピューターの産業化に伴う、半導体産業の貢献余地と新市場としての価値、また波及効果について議論した。最初の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや)  1991年早稲田大学 教育卒。東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2017年、Institutional Investor誌 アナリストランキング1位、日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)など。
【質問1】量子コンピューターの実用化と産業化に、半導体産業はどのような貢献ができると思われますか?
【回答】量子ビットの開発
【質問2】量子コンピューターの普及は、半導体ビジネスの成長に、どのような効果をもたらすと思われますか?
【回答】 AI関連市場の拡大による成長加速
【質問3】量子コンピューターの活用で、半導体産業のビジネス運営や技術開発には、どのような波及効果があると思われますか?
【回答】 AIを軸とした自社の競争力強化と事業領域の拡大

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