次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問25】
國井 良昌
國井技術士設計事務所 所長

  第22回の「氾濫する設計ツールはオールリセット!」や第23回の「『設計書』が書けない設計者」では、日ごろ悩んでいたことをズバッと解説していただき、ありがとうございました。目の前が開けたような気がします。そこで先生に次の質問をさせていただきます。それは、開発のステップと言いますか、DR(デザインレビュー:設計審査)のステップについてです。書籍やセミナーで「DR0、DR1、DR2、DR3、DR4」という、とても複雑な仕組みを目にしました。どの企業もこんなに複雑なステップを踏んでいるのでしょうか。不安になっています。ちなみに、当社は文房具の製造販売をしている中小企業です。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答25】

 正直に言いましょう。私の事務所のクライアント企業は、どこもやっていません。まずは安心してください。「どんな情報でも活字になると真実と思える」という言葉は、昔からよく耳にしますよね。書籍やセミナー、そしてWeb上の記事もそうした印象を与えているようです。近年目立つのが、前述の情報媒体で何度か活字で登場する「設計(開発)ツール」と「開発ステップ」です。共に「複雑、難解」でくくれます。今回は後者の開発ステップに関して解説しましょう。

日本企業の99.6%は中小企業

 本コラムの第22回は「氾濫する設計ツールはオールリセット!」、第23回は「間違いだらけの設計フロー」、そして今回が「間違いだらけの開発ステップ」となっています。過激なタイトルです。これは一体、何が起きているのでしょうか?

 この原因究明は意外と簡単でした。例えば、設計ツールに注目して専門書や技術セミナーの案内書を見てみると、QFD(品質機能展開)や品質工学、超複雑FMEAや難関TRIZなど、中小・零細企業ではあまり関係のない設計ツールが氾濫していました。

 この設計ツール名を知った中小・零細企業の技術者や経営者は、劣等感にさいなまれ、「あの有名な大企業が使用している設計ツールだから我々もどうにか導入したい!」と焦ります。しかし、あの手の設計ツールを見ると、よくもまあ、このような多種で難関なツールを使い分けできるものだと筆者も感心しています。ここで、図1を見てみましょう。なんと、日本の工業関連の大企業はたったの0.4%、残りの99.4%が中小・零細企業です。

図1●日本企業の99.6%が中小企業
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 問題はここです。つまり、難関で重苦しい設計ツールが、0.4%の大企業寄りのツールであることです。その大企業でさえも使いこなすのが難しい設計ツールの氾濫が中小・零細企業における混乱の第1の要因でした。もちろん、難解なツールでも有益なツールは存在しますので、全てを排除することはナンセンスです。

コンカレント開発なんて夢の夢

 自動車関連企業の自慢の開発ステップに、「コンカレント開発」というものがあります。コンカレントを「同時」と訳した学者がいたそうですが、どこが同時なのかを図2で解説します。

 駅伝では、各選手が交代するバトンゾーンが設けられていますが、それに相当する部分が図中における「同時進行部分」です。私は、ある日本の自動車関連企業を徹底分析して質問しました。「同時進行部分に相当するバトンを見せてください。または、説明してください」と──。その回答は衝撃的なものでした。なぜなら、「ない!」の一言だったからです。

 次工程部門へは経緯を口頭で連絡するなど日本企業独特の「あうんの呼吸」で、「コンカレントもどき」を実施していたのです。これではリコールを何度も繰り返すのは当り前だと感じました。残念ですが、そこに反面教師の存在を確認しました。こうしたことから、当事務所のクライアント企業へは図中の文言を指導しています。

図2●同時進行部分が存在する夢のコンカレント開発
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