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古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

 工場で生産がひっ迫しているにもかかわらず、営業部門から「顧客からの強い要請があるので、何とか納期を前倒しできないか?」といった無茶な要求がくることがある。こんなとき、「無理なものは無理」と工場側が突っぱねることは現実的には難しい。顧客対応の優先度は極めて高いからだ。工場は「何とかする」と頑張ってその無茶な要求に応えようとする。

 ところが、だ。「何とかする」とは、一体「何」を「どうする」ことなのか、その実態は明確にはなっていない。多くの工場が、文字通り「何とかする」ことでその場をしのいでいる。こうした工場では多くの問題が発生するリスクをはらんでいる。

 無理して何とかしてしまった場合、営業部門はこう考えるようになる。たとえ工場から「納期の前倒しは難しい」と言われても、何度もしつこく言って押し切れば何とかしてくれる──。営業部門は、工場がある程度余裕を持って納期を伝えてきていると思い込んでいる。そのため、工場が何とかしたのは、従業員が無理をしたり、コストを度外視して特別対応したりした結果だとは思いも寄らない。

 なぜ、こうした誤解が生まれるのか。根本の理由は、営業部門と工場が納期対応の実態を共有していないからだ。これでは、販売や生産の流れがよどみ、経営的に大きなロスが発生する。

強い工場づくりのポイント

 工場は経営への貢献を最大化するために、生産性を高い水準で維持することを求められる。だが、それは常に能力の限界ギリギリで操業するという意味ではない。生産設備の場合、設計能力の限界で稼働させると、エネルギー消費が急激に増加してしまったり、品質不良の発生率が増加してしまったりする。そのため、生産設備の設計能力の限界ではなく、少し余裕を持たせた低い能力で稼働した方が経済的・合理的な場合が多い。

 この、工場の操業上「いっぱい」の水準と「真に限界」の水準とのギャップが、マージンとなる。つまり、突発的な事態が発生した際には、工場はこのマージンを利用して「何とかする」のだ。

 しかし、工場が適切に運営されている限り、このマージンを活用することは、経済性を損ねたり、品質を低下させたり、従業員に過度な負担を強いたりすることとなる。そのため、経営的なロスになることが多いことを知るべきである。

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 強い工場は、操業する上で経済的・合理的な水準を理解している。同時に、限界の水準をどの程度にするかについて、生産部門だけではなく営業から設計、調達、物流に至るまで部門横断型で共有できている。生産性や品質に関して工場の持つ限界が分からなければ、どこまでならば無理が利くのか、その場合にはどのようなロスが発生し得るのか、また、無理をねじ込んだ場合に発生するリスクにはどのようなものがあるのかも共有している。だからこそ、これらの共有された情報を基に「何とかすべきか否か」を正しく判断できるのである。

 従って、強い工場になるには、自らの力量と無理への対応の可否を客観的に判断しながら、現時点の経済的・合理的な操業の基準を把握した上で、その水準や限界水準を高める施策を打つべきである。

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