最近、佐藤航陽氏の著書「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」(幻冬舎)が注目を集めています。この本で佐藤氏は、「お金」という概念が急速に変わりつつあること、そしてそれは、従来の社会基盤を抜本的に作り変えてしまう可能性があることを指摘しています。この見通しについては、私も全く同意見です。

 これまでの社会では、「価値」や「信用」の中心となるものは「お金」でした。お金があれば、好きなものやサービスと交換できます。お金がたくさんあることは、社会的に信用が高いと見なされます。そして、お金をたくさん稼ぐための王道は「良い学校に行き、良い会社に入る」ことだと考えられてきました。「お金があれば幸せになれる」「勉強さえできればそれでいい」──。多くの親がこうした価値観を信じ、子供たちの背中を押してきました。

 でもその結果、何が起こったでしょうか。勉強しかできない、つまらない人間が大量生産されてしまいました。人間的魅力に乏しく、友達もろくにいない。コミュニケーションも満足にできない。性格が歪んでいる、あるいは自分のことしか考えられない。でも今は、そうした人でも高い学業成績を修めていれば「優秀」とされて、指導的立場に就くことが多いというのが現実です。

 「お金ありき」「勉強ありき」の価値観が引き起こしたもう1つの歪みは、お金になりにくい能力や魅力は「取るに足りない」と見なされがちになったことです。例えば、学生の頃、スポーツや音楽、絵を描くことが得意、趣味やセンスが良いなど、クラスの人気者がいたと思います。でも社会に出ると、そのような能力はよほど突出していない限り「へぇー」で終わりです。同様に、一緒にいると楽しい、愛嬌がある、優しい、面倒見がいいなど、自然と周囲に人が集まってくるような人もいます。いわゆる「いい人」です。このような「人望」も、やはり“お人好し”という言葉に置き換えられてしまい、侮蔑的なニュアンスの方が強くなることも少なくありません。

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