「SDGs(エスディージーズ)」という言葉をご存知でしょうか? SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれるものです。分野を問わず、SDGsを念頭に経営戦略を抜本的に見直そう、という動きが昨年頃から活発になっています。

 SDGsは2015年9月の国連サミットにて、加盟193カ国が2016~2030年の15年間をかけて達成すべき普遍的目標として採択されたものです。SDGsでは「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「全ての人の健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」など17の目標と、169の具体的なターゲットが盛り込まれています。日本を含む、国連加盟193カ国がその実現に向けて努力することを約束した普遍的目標です。

 SDGsでは、人類と地球の両方にとってプラスになる開発が重要であり、生活やビジネスを持続可能な形に改善する必要があるとしています。そのため、政府だけではなく企業にも参加を求めていることが大きな特徴です。

 そもそもなぜ、世界はこれほど真剣に「持続可能性」を考えるようになったのでしょうか。それは、「今のままでは社会は立ちゆかなくなる」という危惧が、世界の共通認識として広がっているからです。

 これまで世界の共通課題といえば、「環境問題」(≒地球温暖化)でした。しかし、社会を将来にわたって持続可能にするには、それだけでは足りません。食料や水、資源、エネルギーなど、あらゆるものを持続可能な形に改める必要があります。

 現在、世界最大の人口を抱える国は中国です。しかし、4年後の2022年にはインドが中国を抜いて世界最大の人口大国になる見通しです。インドの国土は中国の半分しかありません。食料や水、資源、エネルギー事情は中国よりもはるかに厳しいのです。

 今はお金さえ出せば、食料や資源、エネルギーなどを好きなだけ買うことができます。ところが、これからの時代は各国がそれぞれ求める量を完全に満たすことは難しくなります。インドの台頭をきっかけに、「足りない」が生活やビジネスの新しい前提となっていくことでしょう。

持続可能でなければ取り引きを止めるケースも

 持続可能性への注目は、今後ビジネスにさまざまな影響をもたらすことでしょう。

 先日、私はオランダに本社を持つ、魚の養殖用の餌(ペレット)を生産している会社を訪問しました。そこで驚いたのは、サステイナビリティー(持続可能性)を強く意識した経営を行っていることでした。

 養殖用の餌で生産量が最も大きいのは、ノルウェーのサケ・マス向けです。餌の成分として重要なのはたんぱく質で、主にイワシやニシンなどの「魚粉」を使っていました。しかし、この会社は2009年に25%だった魚粉の割合を、2015年はほぼゼロ%まで減らしたというのです。魚粉はサステイナブルではないからです。

 魚粉は天然資源であり、供給量には限りがあります。年々コストが上がっているだけではなく、実際手に入りにくくなっているそうです。魚粉の対策だけではありません。他の原料についても独自システムで評価・管理し、サステイナブルな所からしか買わない、という徹底ぶりなのです。

 なぜここまで徹底するのでしょうか? それは、取引先にとってもサステイナブルでないことは、看過できないリスクだからです。

 原材料の価格が上がれば、中・長期的に製品価格が上がるのは確実です。最悪の場合、餌の供給が止まる可能性さえあります。そうなれば、養殖業者は存続の危機に立たされることになる。サステイナブルではない原材料に依存している取引先は、全面的に信頼して調達するのは難しいということなのです。既に欧州では、小売店舗やレストランなどでも、ビジネスがサステイナブルでなければ取り引きして貰えないケースが出てきています。

 これは養殖の餌に限ったことではありません。そして、この流れは日本にも確実にやってきます。SDGsは、日本も含めて達成を約束した世界共通の目標であり、ビジネスはグローバルでつながっているからだ。