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伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師

 日産自動車が、新車の出荷前に実施する燃費・排出ガス測定において測定値を改ざんしていたことが2018年7月9日に発覚しました(関連記事)。同社では昨年(2017年)に完成検査で不正を行っていたことが見つかり、コンプライアンス(法令順守)教育を強化する取り組みを行ってきました。そうした中で、データ改ざんという別の不正が発覚したのです。

 日産自動車だけではありません。今、さまざまな企業でデータ改ざんが発覚しています。私は、一連のデータ改ざん問題は個々の企業の問題にとどまらず、日本の製造業全体に対する信頼を失いかねない非常に由々しき問題だと考えています。

 なぜ、データ改ざんを防ぐことができないのか──。企業は真剣に考えるべきです。ここで注意しなければならないのは、この問題を「個人」の問題にしないことです。「担当者の誰々が悪かった」と言って尻尾切りをするのは簡単です。しかし、それは根本的な問題の解決にはなりません。必ずまた同じことが起きます。

 繰り返し行われるデータ改ざんの背景には、改ざんを実施した組織の体制や文化、ノルマ、プレッシャーなどがあると思います。私は技術者なので、ここでデータ改ざんの背景から根本的な原因を探って解決法を考えるよりも、まずは、「性悪説」に基づいて、データ改ざんできない技術的な仕組みを考えてみました。

 少し寂しい気もしますが、「いくら組織で意識改革に取り組んでも、データ改ざんをしようとする人は出てくる」という考えに基づき、データ改ざんを防ぐ対策が必要だと思います。もちろん、経営者の立場からすると、データ改ざんを起こさせないための意識改革と組織づくりは重要課題です。ただし、それでは完璧とは言えず、やはり技術的な仕組みが必須だと考えます。

検査の仕組みから人間を排除する

 コンピューターには感情がありません。従って、勝手にデータを改ざんすることはありません。自分の都合に合わせるためにデータ改ざんを行うのは、人間です。ということはつまり、計測してからデータベースに登録するまでの間に、人間による何らかの作業が発生するためにデータ改ざんが起きるのです。

 では、データを、計測器が直接インターネットを通じてデータベースに登録する仕組みにすればどうでしょうか? そこには、人間が介入しないので、改ざんの可能性はかなり減ると思います。そう、これがまさにIoT(Internet of Things)なのです。

 データは結果だけを記録するのではなく、計測した過程の全てを時系列で保存すべきです。そうすれば、仮に1カ所だけ改ざんしても整合性が取れなくなることが技術者ならすぐに見抜けます。こうなれば、そう簡単には改ざんできなくなります。

 これに対し、例えば計測結果の数値1つを紙に書き取り、後でコンピューターに手で入力するような仕組みであれば、簡単に改ざんできます。「ばれないだろう」と思えば改ざんする人も出てくるでしょう。